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2008/09/06

法人格否認の法理

『サンラ・ワールド社』法律顧問の佐藤博史弁護士は、同社が運営するインターネット・サイトのトップページに掲載させた「Y’氏訴訟とM氏訴訟についてのご報告」と題する9月4日付の「赤枠広報」で、同日に開かれた訴訟の口頭弁論の報告をしている。

サンラに謝罪して賠償金を支払って和解を成立させたY氏とは別のY氏(以下,Y’氏)が提起した裁判の第2回口頭弁論が9月4日午前10時から東京地裁民事44部(527号法廷)でありました。

傍聴人はゼロで,Y’氏本人(原告)と代理人の長谷山弁護士が出廷しましたが,裁判長から,原告に対し,「原告は投資金を誰に支払ったと主張するのか。サンラとAsian Dream社は別の法人であり,実質的に同じというような主張は,法人格否認の場合以外には,法律の世界では通用しない。仮に,Asian Dream社に対する送金がサンラに対する送金と同視できると主張するのなら,その根拠を明らかにされたい」との発言があり,次回までに原告はこの点を明らかにすることになりました。

投資家の投資金はAsian Dream社(またはFrontier One社)から投資先に全額送金されており,サンラは1円も利得していませんので,Y’氏のサンラに対する請求はその意味でも筋違いですが,裁判長の原告に対する求釈明は,まさにこの点を質したものです。

裁判長の発言を根拠に、佐藤弁護士はこの裁判が、さも被告側(サンラ・ワールド社ら)に優勢であるかのように述べている。一般人が耳慣れない法律用語をまじえて、「Y’氏は,既に窮地に立っています」とまで言い切られれば、真に受けてしまうのかもしれない。

そこで、佐藤弁護士の独善的に偏倚した報告に出資者が惑わされないよう、「法人格否認」という言葉の意味について触れておくことにする。

法律上、法人には会社の構成員個人(役員・株主・社員)とは別個の人格が認められ、独立した権利義務の主体となる。しかし、法人格の原則に従うことが正義や公平に反すると認められる場合には、当該事件の解決に関する範囲で法人格が存在しないものとみなし、その背後にある支配者と同一視して責任を追及することがある。これを「法人格否認の法理」という。法律としての条文はないが、判例上において認められている法の理論だ。

最高裁判所判決:昭和44年02月27日〔事件番号:昭和43(オ)877〕

判示事項 一、法人格否認の法理二、実質が個人企業と認められる株式会社における取引の効果の帰属

裁判要旨 一、社団法人において、法人格がまつたくの形骸にすぎない場合またはそれが法律の適用を回避するために濫用される場合には、その法人格を否認することができる。二、株式会社の実質がまつたく個人企業と認められる場合には、これと取引をした相手方は、会社名義でされた取引についても、これを背後にある実体たる個人の行為と認めて、その責任を追求することができ、また、個人名義でされた取引についても、商法五〇四条によらないで、直ちにこれを会社の行為と認めることができる。

参照法条 民法33条,商法52条,商法504条

判例全文

法人格否認の法理が適用されるには、一定の構成要件が必要とされる。それが、法人格の濫用と形骸化だ。法人格の濫用とは、契約上の義務や法規を回避し、不法行為責任を免れるなど、違法または不正な目的のために会社の法人格が利用されていること。そして、その目的をもって、構成員(背後の支配者)が会社の法人格を支配している場合に、法人格否認の法理が認められる要件となる。

もう一つの要件である法人格の形骸化は、法人格の濫用の場合とは異なり、主観的な目的は必要とされない。制度上は登記された法人であっても、実質的には構成員の個人営業であったり、親会社の営業の一部門に過ぎなかったりする場合に、法人格の形骸化は認められる。客観的に、当該法人と構成員間または複数の会社とのあいだに実質上の同一性があればよいとされているのだ。その判断の基準とされるのが、構成員個人や他会社との財産の混同、営業活動の反復継続した混同などである。登記上は存在するが実体のないペーパー・カンパニーなどは、法人格の形骸化を示す例として最もわかりやすい。

「赤枠広報」に、まるで勝ち誇るかのように書かれた裁判長の求釈明とは、この法人格否認の法理について質したものだったのだろう。

サンラ・ワールド社が募集・勧誘した出資金集めのシステムでは、海外に設定された2法人が、預り金業務を担当してきた。'06年の春ごろまでは『アジアン・ドリーム社』(Asian Dream,Inc.)が使われ、その後は『フロンティア・ワン社』(Frontier One,LLC.)に同一業務が引き継がれている。国内でサンラ・ワールド社から勧誘された出資者は、投資先とされる事業体へ出資金を送金するのではなく、アジアン・ドリーム社もしくはフロンティア・ワン社の名義で開設された外国銀行の口座へ送金する。その仕組みを根拠に、サンラ・ワールド社や同社社長の江尻眞理子氏、同社の実質上の支配者である増田俊男氏らは、自分たちの責任の不存在を訴訟のなかなどで主張しているのだ。「赤枠広報」にも、「投資家の投資金はAsian Dream社(またはFrontier One社)から投資先に全額送金されており,サンラは1円も利得していませんので,Y’氏のサンラに対する請求はその意味でも筋違い」と書かれている。

しかし、アジアン・ドリーム社もフロンティア・ワン社も、江尻氏と増田氏が所有するペーパー・カンパニーだ。前者は、タックス・ヘイブンに設定された「ノミニー」といわれる匿名会社で、しかも所在地とされた香港の事務所は、連絡事務代行サービス会社を利用していただけで有名無実。登記上は匿名とされているが、江尻氏が社長、増田氏が会長を名乗っていた。そして後者はハワイに登記された法人だが、こちらも役員は江尻氏と増田氏だ。両社とも現地には営業実態がなく、実際に業務を行なっているのは、サンラ・ワールド社の海外事業部である。

アジアン・ドリーム社とフロンティア・ワン社、そしてサンラ・ワールド社。同じファンドの運営に関わる3社が、いずれも同一人が支配している会社だ。継続した業務の混同もある。それだけでも客観的にみて、アジアン・ドリーム社とフロンティア・ワン社は、法人格の形骸化といえるのではないだろうか。

そして、裁判や「赤枠広報」のなかで佐藤弁護士がうたう、「送金先の会社とサンラ・ワールド社は別会社。だから責任はない」とする屁理屈こそ、法人格の濫用の意図のあらわれともとれる。法人格否認の法理は、会社制度を悪用した脱法を排するためにある法の理論なのだから。

【推薦サイト】弁護士と闘う(日本弁護士被害者連絡会のブログ)

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