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2008/10/13

法廷で暴かれた「増田俊男」氏と「佐藤博史」弁護士のウソと不正

増田俊男氏らが、当ブログ管理者に対して起こしていた〝嫌がらせ訴訟〟の判決が言い渡された7日以降、佐藤博史弁護士(新東京法律会計事務所)は沈黙をつづけている。

この裁判の原告側代理人で『サンラ・ワールド社』法律顧問の佐藤弁護士は、判決前にはまさに騎虎の勢いで、連日のように自己の優勢を大宣伝していた。先月12日には、サンラ・ワールド社が運営するサイト上で「津田氏のもうひとつの名誉毀損裁判の判決は10月7日です。津田氏の虚偽が裁判所によって断罪される日が近づいています」と予告し、異様なまでの自信を表明していた佐藤弁護士。ところが、フタを開けてみるとサンラ側の完敗である。しかも、裁判所によって虚偽を断罪されたのは、佐藤弁護士自身だった。

判決について、サンラ側からの発表がないため、当ブログで判決文を公開しておく。

「hanketsu08.10.07b.pdf」をダウンロード ←「判決文」クリック!

8月1日の赤枠広報で、佐藤弁護士は自身の執筆記事に、参考資料として名誉毀損裁判で提出した「準備書面6」(7月28日付)を添えていた。

「200808011.pdf」をダウンロード ←「準備書面6」クリック!

ぜひ、判決文と比較して読んでもらいたい。

佐藤弁護士は「準備書面6」のなかで、被告(津田)や被告側証人のK氏らをことごとく「ウソツキ」呼ばわりし、被告側代理人の大野裕弁護士に対しては「弁護士職務基本規定」を引用して激烈に批判していた。

20 被告訴訟代理人は,被告準備書面(3)に次のように書いた。

「原告ら訴訟代理人らは準備書面4及び5において,被告本人のみならず,その訴訟代理人である当職,あるいは全くの第三者であるK三郎・南里軍人を,まるでアジテーションビラの如き激烈な言葉を用い非難している。
しかし原告ら訴訟代理人らによる非難は,その表現の激烈さとは裏腹に,くだくだしい言葉が踊るばかりであり,説得されるべき点も,心に響く点も存在しない。その原因はどこにあるのであろうか。それは要するに,証拠の基づかずに自分に有利なストーリーを強引に作り上げて,その構築したストーリーに併せて証人を強引に誘導して言質を取るという原告ら訴訟代理人らの立論・立証の手法の本質的欠陥にあるのである。すなわち,原告ら訴訟代理人らは,証拠によって事実を明らかにするのではなく,主張によって事実を作りあげようとするから,その主張が他者の心に響かないのである。」(2 頁)

しかし,本件は,被告とKが,佐藤は脅迫事件の「もみ消し」を行ったと主張してやまない,佐藤の名誉にも関わる事件である。つまり,Kは,第三者などではない。

そして,既にみたように,被告およびKは,嘘に嘘を重ねて,佐藤をおよそあり得べからざる弁護士として描き,そこで用いられた言葉は,原告ら訴訟代理人の言葉をはるかに上回る激烈なものである(その一端は既にみてきた)。

さらに,強調しなくてはならないが,被告訴訟代理人は,被告がつぎつぎに紡ぎ出す「嘘の集積」をまったく無批判に証拠として裁判所に提出した。

また,本件訴訟ほど,争点に無関係な,相手方および相手方訴訟代理人の名誉・信用を毀損する文書が証拠として提出されたことはないであろう。

弁護士職務基本規定は,その20 条(依頼者との関係における自由と独立)で,「弁護士は,事件の受任及び処理に当たり,自由かつ独立の立場を保持するように努める」と定め,依頼者の言いなりになってはならないことを定め,さらに,その6 条(名誉と信用)で,「弁護士は,名誉を重んじ・・・・・・」,70条(名誉の尊重)で「弁護士は,他の弁護士・・・・・・との関係において,相互に名誉と信義を重んじる」,71 条(弁護士に対する不利益行為)で「弁護士は,信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない」と定めている。

原告らと佐藤の名誉を著しく毀損する被告やKの「嘘」を平然と擁護し,原告ら訴訟代理人の準備書面を,「アジテーションビラの如き」と評し,「くだくだしい言葉が踊るばかり」と罵倒する被告訴訟代理人の行為は,弁護士倫理に反する疑いがある。
「証拠の基づかずに自分に有利なストーリーを強引に作り上げ」た,「証拠によって事実を明らかにするのではなく,主張によって事実を作りあげようと」したのは,被告およびK,そして,被告訴訟代理人であって,原告らあるいは佐藤では断じてない。

しかし、裁判所の認定は、まったくの逆だった。「弁護士倫理に反する疑いがある」と非難された大野弁護士の完勝である。佐藤弁護士には、あらためて「弁護士職務基本規定」を読みなおしてもらいたい。

平成20年10月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成1 9年(7)第4 4 4 5号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 平成20年7月29日

                  判     決

東京都中央区日本橋人形町三丁目1番1 1号
原           告       サンラ・ワールド株式会社
同代表者代表取締役        江  尻  眞 理 子

東京都●●区●●●●●●●
原           告       増  田  俊  男

上記両名訴訟代理人弁護士    佐  藤  博  史
     同               木  村  文  幸
     同               金  澤     優

東京都●●区●●●●●●●
被           告       津  田  哲  也

同訴訟代理人弁護士        大  野     裕

            主    文

1 原告両名の請求を,いずれも棄却する。

2 訴訟費用は,原告両名の負担とする。

         事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告杖,原告サンラ・ワ⊥ルド株式会社に対し,金1650万円及びこれに対する平成1 9年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を,原告増田俊男に対し,金1650万円及びこれに対する平成19年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を,それぞれ支払え。

2 被告は,別紙1、 「ブログ目録」に記載の各ブログから,別紙2 「ブログ記事目録」に記載の各記事を削除するとともに,同各ブログのトップページに,別紙6の被告作成の謝罪文を,それぞれ本判決確定の日から1年間掲載せよ。

3 被告は,別紙1 「ブログ目録」 1に記載のブログのトップページに別紙4 「謝罪広告文」に記載の謝罪広告を,同目録2及び3に記載の各ブログのトップページに別紙5 「謝罪広告文」に記載の謝罪広告を,それぞれの別紙に記載の条件で,本判決確定の日から1年間掲載せよ。

第2 事案の概要

本件は,投資顧問会社である原告サンラ・ワールド株式会社(以下「原告会社」という.)及びその実質的な主宰者である原告増田俊男(以下「原告増田」という。)が,ジャーナリストである被告が執筆し掲載した別紙1「ブログ目録」に記載の各記事(以下「本件ブログ記事」という。)によって名誉及び社会的な信用を毀損されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまでの遅延損害金並びに謝罪広告及び謝罪文の各掲載を求めた事案である。

1争いのない事実等(証拠により認められる事実は括弧で証拠を示す。)

(1)当事者

ア 原告会社は,平成8年4月1 5日に,有価証券を中心とする投資顧問業,金融や資産運用等のコンサルタント等を目的として設立された株式会社であり(甲1号証),卓の代表者は原告増田の妻である江尻虞理子(以下「江尻」という。)とされているが,実質的な主宰者は原告増田である。

イ 被告は,本件ブログ記事を執筆し,別紙1 「ブログ目録」に記載の各ブログ(以下「本件各ブログ」という。)に掲載したジャーナリストである。
ウ HT(以下「H」という。) は, 昭和51年に米国のロスアンゼルスで原告増田と知り合い, その後, 平成10年に日本で原告増田と再会し, 平成11年には原告両名の広報活動等を目的として設立されたサンラ出版株式会社 (以下「サンラ出版」という。) の取締役副社長に就任し, 「サンラ出版」が発行していた月刊誌「資本の意志」の編集長となった。Hは,平成12年1月にはサンラ出版の代表取締役に就任し,平成13年9月ころまで,その地位にあった(乙30号証)。

エ KS(以下「K」という。) は, Hの友人であり, 平成11年ころにHの紹介で原告増田と知り合い, その後, 原告増田から原告会社の経営等について相談されるなど親密な交際をしていた者であって, 被告に原告両名に関する情報を提供した者である。

(2)被告が雑誌「財界展望」に執筆した記事につき先に示談がなされたこと

ア 被告は,Kに取材して得た情報を元に, 「『投資の神様』は本当か?出資法違反も疑われる有名評論家増田俊男氏が集めた『四十億円』」と題する記事(甲2号証,以下「本件財展記事」という。) を執筆し, 平成14年8月1日, 株式会社財界展望新社 (以下「財界展望社」という。) 発行に係る雑誌「財界展望」 2002年9月号に掲載した。

イ 本件財展記事には,「サンラ・ワールド株式会社は出資法に違反する疑いもある」, 「増田氏はロスでネズミ講の支部長をやっていて逮捕され一年ほど刑務所に入れられている」との記載のほか, 「一昨年,増田氏は投資に関するトラブルで,都内の公認会計士から7 1 0万円の支払いを求める訴えを,東京地方裁判所に起こされている。その提訴の直後,原告の公認会計士のもとへ数人の暴力団員風の男が押しかけてきて, 『増田先生に対する訴えを取り下げろ』と凄んだというのだ。会計士を脅しに行った人物は,『(脅迫の)仕事が終わったあと,増田先生は俺に『謝礼だ』と言って100万円を渡そうとした』と証言している。」との記載があった(申2号証)。

ウ これに対し,原告両名は,財界展望社及び被告に対し,本件財展記事の「サンラ・ワールド株式会社は出資法に違反する疑いもある」, 「増田氏はロスでネズミ講の支部長をやっていて逮捕され一年ほど刑務所に入れられている」などの記載は原告両名の名誉及び社会的信用を穀損したとして抗議した。財界展望社は,原告増田に関する本件財展記事の記載の一部に誤りがあることを認め,平成14年10月1日発売の「財界展望」 2002年11月号に謝罪広告を掲載した(甲5号証,乙9号証添付の資料9)。
エ さらに,財界展望社, 「財界展望」の当時の編集長である永野敏之及び被告は,原告両名に対し,平成14年10月3 1日,本件財展記事が原告両名の名誉と信用を著しく穀損したことを陳謝するとともに,財界展望社が原告両名に慰謝料として合計5 0万円を支払うこととする示談をした(甲3号証)。財界展望社は,上記示談に基づき,原告両名に対し,合計5 0万円を支払った。

(3)被告が自分のブログに本件ブログ記事を掲載したこと

ア 被告は,平成18年10月13日及び同年11月22日,本件ブログ記事を執筆し,被告自身が開設した本件各ブログにそれぞれ掲載した。本件ブログ記事の内容は,別紙2 「ブログ記事目録」及び別紙3 「ブログ記事本文」に記載のとおりである。

イ 本件ブログ記事のうち,別紙3 「ブログ記事本文」②ないし④の部分は,本件財展記事からの引用であり,原告増田が平成12年に同人に対し損害賠償請求訴訟を提起した公認会計士に対して同訴訟を取り下げるよう脅迫したとされる事件(以下「公認会計士脅迫事件」という。) について記載されている。

ウ 本件ブログ記事のうち,同別紙⑤ないし⑦の部分には,原告増田が弁護士と共謀してKに対し公認会計士脅迫事件に原告増田が関与したことにつきHに口止めすることを依頼したとされる事件(以下「公認会計士脅迫口止め事件」という。) について記載されている。

2 争点及び当事者の主張

本件は,被告の本件ブログ記事によって原告両名の名誉等が侵害されたとして争われているものであり,侵害の事実の有無とともに,被告に違法性阻却事由が認められるか否か,とりわけ摘示された事実が真実であるか否かが争点である。

(1)争点1 (原告両名の社会的評価の低下の有無)

(原告両名の主張)

本件ブログ記事は,原告増田が公認会計士脅迫事件に共犯として関与していること及び原告増田が公認会計士脅迫事件の口止めを図ったとの事実をそれぞれ摘示したものであり,脅迫罪や証拠隠滅罪に該当する事実を摘示したものであるから,これにより原告増田及び原告増田と密接な関係にある原告会社の名誉及び社会的信用を著しく毀損したものである。

(被告の主張)

・原告両名の上記主張は争う。

(2)争点2 (公共性及び公益目的の有無)

(被告の主張)

ア 本件ブログ記事は,別紙3 「ブログ記事本文」に記載のとおり,投資名目で大々的に資金集めを行ってきた原告両名の行為の問題性を指摘するとともに,この莫大な資金集めと密接不可分の関係にある公認会計士脅迫事件及び公認会計士脅迫口止め事件を取り上げたものである。

イ 被告が本件ブログ記事を執筆・掲載した動機は,ジャーナリストとしての正義感・使命感にあり,原告両名による莫大な資金集め行為の問題性を広く市民ないし消費者に知らしめ,その批判に晒すことによって投資被害及び消費者被害の拡大を防止することにあった。

ウ 被告は,本件ブログ記事の読者から,投資名目で原告両名に預けた資金の返還方法等について相談を受けたことがあるが,そのことに対する対価は一切受け取っていない。本件記事の内容は客観的な取材に基づくもので,殊更に原告両名を侮辱するなど感情的な表現は含まれていない。

エ 本件ブログ記事の内容に公共性があり,被告が本件ブログ記事を投稿したことが公益目的によるものであることは明らかである。

(原告両名の主張)

本件ブログ記事の内容は公共性を有することは認める。
しかし,本件ブログ記事が摘示した事実はいずれも虚偽であり,かつ被告はそのことを知り尽くしていたから,公益目的ではない。

(3)争点3 (真実性又は相当性の有無)

(被告の主張)

ア 本件ブログ記事は真実である。

(ア) Hの供述(乙30号証)によれば,原告増田は,Hに対し,謝礼金の提供を事後的に申し出ただけでなく,事前に公認会計士への脅迫を指示したというのであるから,原告増田が公認会計士脅迫事件の首謀者であったことは明らかである。Hは,実行行為の中心人物であり,脅迫罪の公訴時効期間が満了した今となって虚偽を述べる動機は乏しく,その供述の信用性は高い。

(イ)また,Kも,本法廷において,原告増田がHら公認会計士脅迫事件の実行犯を招いてご苦労さん会を開いたこと,ご苦労さん会の後,江尻が,Hに対して報酬の趣旨で「少ないけど」といってお金を渡そうとしたこと,一平成15年2月10日より前に,佐藤博史弁護士(以下「佐藤弁護士」という。) から電話でHの口止めを依頼されたことなどを供述しており, その信用性は高い。

(ウ) 仮に,本件ブログ記事の一部に真実ではない事実(例えば,公認会計士が原告両名に対して提起した損害賠償請求訴訟の訴訟額は7100万円ではなく, 4792万円余りであったことなど。)が含まれていたとしても,そのような事実は,本件ブログ記事全体からみれば重要な部分ではなく,本件ブログ記事全体としては真実であるといえる。

(エ) 以上のとおり,本件ブログ記事全体の内容が真実であることは明らかである。
イ 仮に,本件ブログ記事に真実ではない部分があったとしても,被告には本件ブログ記事の内容を真実であると信じるについて相当の理由があった。

(ア) 被告は,公認会計士脅迫事件及び公認会計士脅迫口止め事件について,それぞれに深く関与しているH及びKの他,公認会計士であるFT(以下「F」という。)に取材を行っており,本件ブログ記事が執筆及び掲載された当時,本件ブログ記事の内容が真実であることを確信していた。

(イ) Fは,被告に対し,Fの友人であり仕事仲間である公認会計士の一人(以下「O」という。)が暴力団員風の男数名から殴られるなどの暴行を受け,Fの原告両名に対する訴えを取り下げるよう脅迫されたことがあると供述していた。 .

(ウ) このように,被告は関係者に対し綿密かつ周到な取材を行い,いずれも信用性の高い資料に基づいて真実であることを確信していたものである。

(原告両名の主張)

ア 本件ブログ記事の内容は,いずれも虚偽である。

(公認会計士脅迫事件)

(ア) 原告両名は公認会計士脅迫事件の存在は認めるが,原告増田が共犯として同事件に関与した事実はない。

(イ) 本件ブログ記事は,Hらが「原告の公認会計士」を脅し, 「増田」が「謝礼だ」といって「100万円」を渡そうとしたと「脅しにいった人物が証言している」などの各事実を摘示しているが,Fの報告書によれば,脅迫されたのは「原告の公認会計士」ではないし,K証言によれば,Hに金を渡そうとしたのは,原告増田ではなく,江尻であった。さらに,Kは,江尻は「謝礼だ」といったのではなく, 「少ないけど」といったと証言した。しかも,K証言では, 「100万円」であるかどうかは明らかではない。要するに,本件ブログ記事の摘示事実の殆どは,K証言などによっても虚偽である。

(ウ) また,Kは,原告増田が,公認会計士脅迫事件の実行者であるHらをねぎらうためにご苦労さん会を開き,その際,江尻がHに謝礼を渡そうとしたのを見たこと及び原告増田にいわれて佐藤弁護士と数回面談したが,その面談から程なくして佐藤弁護士から口止めの電話があり,Hが高津警察署に出頭する前にHに原告増田の関与を否定するよう説得したため,Hは高津警察署で原告増田のことを話さなかったことをそれぞれ証言した。
しかし,平成15年1月ころのKと原告増田との通話を録音した記録(甲24号証,乙25号証。以下「通話記録」という。)によれば,Kは,原告増田に対し, 「おれは,あの,何かそれを終わって,そういう事件が終わってから一席どっかで設けたことがあるんですよね」(9 2)(( )は通話記録の会話番号である。以下同じ。), 「それで,設けてね,それがご苦労だっていうことで設けたんだと。本人がいうにはですよ。」(94)と発言しており,ここでいわれている「おれ」及び「本人」とは,Hを指していることは明らかであるから,ご苦労さん会を開いたのはHである。

(エ) しかも,Hは,原告会社の代表取締役を退いた後,原告会社の顧客を対象として,投資会社である株式会社ブロードバンドテレビジョン(以下「ブロードバンド」という。)を設立するなど原告増田とは敵対関係にあったところ,ブロードバンドの代表取締役を務めていたのはKの長男であり,K自身も同社の取締役であったから,Hとは一体的な関係にあり,中立の第三者ではない。そのような立場にあるKの証言には信用性がない。

(オ) さらに,Hの証言書(乙30号証)には信用性も証拠価値もない。同人は,原告増田に対し,強い憎悪を抱いている一方,Kとは協力関係にあり,同人から頼まれれば,同人の窮状を救うために「証言書」に署名することを厭わない。Hの証言書(乙30号証)は,わずか1頁のもので,その内容はK証言を要約しただけで,Hだけしか知らない事実は記載されていない。

(カ) 結局,公認会計士脅迫事件について被告が提出した証拠(乙5, 2 8,3 0号証及びK証言)にはいずれも信用性がない。

そうすると,原告増田が公認会計士脅迫事件に共犯として関与したことは立証されていない。

(公認会計士脅迫口止め事件)

(ア) 公認会計士脅迫事件が虚偽である以上,公認会計士脅迫口止め事件も虚偽である。

(イ) 法科大学院で刑事弁護を教える佐藤弁護士が,平成1 5年2月当時において原告増田と敵対関係にあったHに対し,第三者であるKを通じて働きかけるという,実効性の乏しい,かつ露見する可能性の高い,しかも犯罪を構成する証拠隠滅行為を行うことはあり得ない。

(ウ) また,Hが高津警察署に出頭したのは同月1 0日であり,Kが佐藤弁護士と面談したのは同月7日, 10日及び12日であった。他方,K証言によれば,佐藤弁護士による口止め依頼があったのは,面談後の電話よるというのであるから,Hが高津警察署に出頭する前に口止めを依頼する時間的余裕はなかった。被告は,後でKの「陳述書(2)」 (乙2 8号証)を提出して,出張先の新幹線の中から佐藤弁護士が口止め依頼の電話をしてきたのは同月8日又は同月9日のことであると訂正したが,佐藤弁護士はいずれの日も出張していない。その日は土曜日と日曜日である。

(エ) 実際のところ,Kは,佐藤弁護士に対し,平成15年2月7日,他愛のない世間話として,原告増田が開いたご苦労さん会の話をした。佐藤弁護士は,その話を聞き,たまたま本件財展記事の示談に関与していたので,本件財展記事の情報源がKであることに気付いたが,その時は黙って聞いていた。そして,佐藤弁護士は,サンラ出版の株券を回収した後である同月17日ころ,Kに対し,公認会計士脅迫事件について根拠のない話を吹聴しないように電話で警告した。佐藤弁護士紘,本件財展記事について既に解決済みであったことなどから,Kに対し,電話で警告するだけで十分と考えた。佐藤弁護士がKに対し電話で警告したのはこの時の1回限りであり,その時点で,同月10日に行われたHの取調べは終了していたから,Hに対する捜査とは無関係である。このように佐藤弁護士の口止めは,K自身に対する口止めであった。

(オ) なお,原告増田及び佐藤弁護士は,同月当時,同月10日にHに対する取り調べが行われたことを知らなかった。公認会計士脅迫口止め事件なるものは存在しない。

イ 被告が真実であると信じたことに相当の理由はない。

(公認会計士脅迫事件)

通話記録によれば,ご苦労さん会の主催者についてK証言と本件ブログ記事との間に食い違いがある。そして,被告は同テープを録音直後に入手しており,Kの供述内容が担造されたものであることに気付くことは容易にできたから,真実であると信じる相当の理由はない。

(公認会計士脅迫口止め事件)

Kの証言内容は虚偽であり,そのことは被告自身が知っていたから,被告は,公認会計士脅迫口止め事件が真実であると信じる余地はない。

(4)争点4 (損害額と謝罪広告等)

(原告両名の主張)

ア 損害額

本件ブログ記事の内容は原告両名の名誉及び信用を著しく傷つけた。本件ブログ記事が摘示した公認会計士脅迫事件及び公認会計士脅迫口止め事件はいずれも虚偽であって,かつ被告において真実であると信じる余地はなかった。被告は,原告両名に対し,公認会計士脅迫事件を報じた本件財展記事につき謝罪し,同様の行為を繰り返さない旨誓約していたにもかかわらず,本件ブログ記事で公認会計士脅迫事件に付加して公認会計士脅迫口止め事件を報道して原告両名に対する名誉及び信用鞍損行為を繰り返したので,悪質性は顕著である。インターネットを悪用した名誉及び信用穀損行為が氾濫している今日,悪質な捏造記事は犯罪というべきであり,一罰百戒の意味をも込めて,高額の慰謝料の支払を命じる必要がある。
本件ブログ記事による原告両名の損害は,弁護士費用を含めて,それぞれにつき1650万円,合計3300万円と認められるべきである。

イ 謝罪広告等

本件において原告両名が受けた損害を回復するためには,損害賠償だけでは不十分であり,原告両名が求めている別紙4ないし6の謝罪広告等の掲載を命じる必要がある。

(被告の主張)

すべて争う。

第3 当裁判所の判断

1 争点1 (原告両名の社会的評価の低下の有無)について

(1) まず,本件ブログがインター.ネット上で公開されているもので,誰でもこれにアクセスすることができ,不特定多数の者が簡単に閲読することができるものであること,しかも,本件ブログ記事の内容が,別紙2 「ブログ記事目録」及び別紙3 「ブログ記事本文」に記載のとおりであること,以上の事実は当事者間に争いがない。

(2) そこで,本件ブログ記事が原告両名の社会的評価を低下させるものか否かについて検討するが,一般に,言論等によって個人や法人等の社会的評価ないし信用を低下させたかどうかは,これを閲読する一般読者を基準に判断すべきであるから,以下,このような観点から,検討する。

ア 本件ブログ記事のうち,公認会計士脅迫事件について言及した記載①ないし④,とりわけ, 「この訴訟で,増田氏と江尻社長は常軌を逸した"無法"な対策を講じている。」 (記

①), 「一昨年,増田氏は投資に関するトラブルで,都内の公認会計士から7100万円の支払いを求める訴えを,東京地方裁判所に起こされている。その提訴の直後,原告の公認会計士のもとへ数人の暴力団員風の男が押しかけてきて, 『増田先生に対する訴えを取り下げろ』と凄んだというのだ。公認会計士を脅.しに行った人物は, 『(脅迫の)仕事が終わったあと,増田先生は俺に『謝礼だ』と言って100万円を渡そうとした』と証言している。」 (記

②)との.部分は,結局,原告増田と原告会社の江尻社長が,暴力団員風の男を使って,公認会計士に訴訟を取り下げるよう凄むという,常軌を逸した無法な対策を講じたという事実を摘示しているものであるから,これを閲読する一般読者に対して,原告両名が公認会計士を脅迫して訴訟を取り下げさせようとしたという違法な行為を行ったとの印象を与えるものである。

イ また,本件ブログ記事のうち,公認会計士脅迫口止め事件について言及した記載⑤ないし⑧の部分には, 「『被害者は自分』とまで言い切った増田氏だが,およそ半年後の' 03年初旬,氏の弁明が"真っ赤なウソ"だったことが明らかになる。 増田氏は,弁護士と共謀して事件の口止めを図ったのだ。」 (記載⑤), 「警察が行方を追っていたさなか, Hと連絡が取れるK氏という人物のもとへ,増田氏本人とサンラの弁護士から電話がかかった。用件は, Hの口止めの依頼である。 『Hが高津署へ出頭しても,増田氏の関与は否定してはしい』と増田氏と弁護士は再三にわたって, K氏を通じて要求したのだという。」 (記載⑥), 「しかしHは,自己の犯行は素直に認めたが, 『自分の一存でやった』と,増田氏の教唆については否認をつづけたのである。こうして増田氏は,神奈川県警の捜査の手を逃れた。」 (記載⑦), 「サンラの周辺には,いまも闇勢力の影がチラつく」 (記載⑧)などと書かれており,結局,原告増田が弁護士と共謀して,公認会計士脅迫事件に関する警察の捜査に対し,その実行犯であるHが原告増田の関与を否定するよう, Hの知人であるKに依頼したという事実を摘示しているものであるから,これを閲読する一般読者に対して,原告増田が警察の捜査を妨害するという違法な行為を行ったとの印象を与えるものである。

(3) そうすると,上記のような内容の本件ブログ記事は,原告両名の社会的評価及び信用を低下させるものである。しかも,被告は,このような本件ブログ記事をインターネット上の本件ブログに掲載し,不特定多数の者が閲読することができるようにしたのであるから,被告は,原告両名の社会的評価及び信用を低下させたものといわざるを得ない。被告は,本件ブログ記事の内容は真実であるから,原告両名の社会的評価を低下させるものではないと主張するようであるが,仮に,本件ブログ記事の内容が真実であったとしても,本件ブログ記事や号原告両名の社会的評価を低下させるものであることに変わりはないから,被告の上記主張を採用することはできない。

2 争点2 (公共性及び公益目的の有無)について

(1) 本件ブログ記事において摘示されている事実が,公共の利害に関する事実であることは,当事者間に争いがない。

(2) しかしながら,原告は,本件ブログ記事は虚偽の事実を内容とするものであり,被告もそのことを知っていたから,公益目的によるものとは認められないと主張している。そこで,この点について検討するに,証拠によれば,以下の事実が認められる。

ア 被告が本件各ブログを開設する以前にも,インターネット上には,原告両名が投資名目で資金を集めていることが問題であると指摘した「サンマス・ブログ」 というブログが存在していた(乙9,同添付の資料12,乙10添付の資料1,同30)。そこで,被告は,これに投稿するなどして原告両名の問題点を明らかにしていたが,平成1 8年9月にこの「サンマス・ブログ」が閉鎖されてしまったため,同年1 0月に自分で本件ブログを開設した(乙9,被告本人の供述)。

イ 原告会社が運営するサンラ・インベストメント・クラブ(以下「SIC」という。)の会員の一部は,原告両名に対し,詐欺を理由として,損害賠償を請求する訴訟を提起している(乙3号証)。その後,本件ブログ記事を読んだS IC会員らは,原告両名に対し,投資した金銭の返還を求め,その結果として,投資した金銭の一部の払戻しを受けた者もいる(甲10-13号証)。

ウ 被告は,本件ブログ記事の内容が真実であると確信して(被告本人の供述),本件ブログ記事に被告の実名と顔写真とを掲載し(甲7-9号証),責任の所在を明確にした上で本件ブログ記事を発表している。しかも,被告は,本件ブログ記事を閲覧し,原告両名らに投資名目で資金を預託しているという読者からの相談に応じ,必要な情報を提供しているが,それらのサービスはすべて無料であり,被告は何らの対価を受額していない(乙4号証の1-乙4号証の18)。

エ 被告らの上記活動などの影響もあって,原告両名が投資名目で行っている資金集めの実態は社会的にも問題視され,平成20年1月から5月ころにかけて,新聞・週刊誌・テレビ等でも広く報道されるようになった(乙12-24号証)。

(3) 上記認定の事実を総合考慮すれば,被告は,一般大衆が原告両名の投資話に乗せられて金銭を不当に奪われることを心配し,そのような損害の拡大を少しでも防止しようとして,本件ブログ記事を執筆し掲載したものと認めることができるから,そこで取り上げられている事実関係の真偽はともかく,被告自身がもっぱら公益を図る目的をもって本件ブログ記事を執筆し,本件ブログに掲載したものと認めることができる。

この点について,原告両名は,本件ブログ記事の内容はいずれも虚偽であり,かつ,被告はそのことを知り尽くしていたから,公益目的ではないと主張しているが,本件ブログ記事の内容の真否と公益目的の有無とは別個に検討すべき問題である上,被告自身は本件ブログ記事の内容が真実であると確信していたことが明らかであるから,原告両名の上記主張は,その余の点について判断するまでもなく,採用することができない。

3 争点3 (真実性又は相当性の有無)について

(1) 被告が執筆した本件ブログ記事の内容が別紙2 「ブログ記事目録」及び別紙3 「ブログ記事本文」に犀我のとおりであることは,当事者間に争いがない。そして,本件ブログ記事では,前記のとおり,公認会計士脅迫事件,公認会計士脅迫口止め事件の2つの事件の真偽が問題となっているから,以下,順にこれを検討する。

(2) 公認会計士脅迫事件関係

ア まず,公認会計士脅迫事件として問題にされている本件ブログ記事は,別紙3 「ブログ記事本文」の①ないし④に記載のとおりであって,その中心は記載②の部分であり,都内の公認会計士が原告増田に対して7100万円の支払を求める訴訟を起こしたところ,原告の公認会計士のもとに数人の暴力団員風の男が押しかけてきて,訴訟を取り下げるよう凄まれたこと,原告増田はこの脅迫した人物に対して「謝礼だ」と言って100万円を渡そうとしたという事実を述べている部分である。

イ そして,後記の証拠によれば,公認会計士脅迫事件については,以下の事実を認めることができる。すなわち,

(ア) 平成1 2年に,公認会計士で税理士の資格をも有するFは,原告会社及び原告増田を被告として,株式投資をめぐって生じた損害賠償を求める訴え(東京地方裁判所平成1 2年(7)第9 6 5 5号,以下「F訴訟」という。)を提起したこと(乙6, 7号証),ただし,.その請求額については明確な立証はないものの,被告も7100万円ではなく, 4792万円余りであったと認めていること(弁論の全趣旨),

(イ) その後ほどなく,Fの友人で,Fと同じ事務所で働いている同僚のOが,暴力団員風の者4人から殴るなどの暴行を加えられた上, 「今裁判をやっているな。やめておけ。」, 「Fに裁判を取り下げろと強くいっておけ。」などと言われて,脅迫を受けたこと(乙6, 7, 30号証),

(ウ) Fは,その直後に,Oから上記脅迫事件について聞かされ,強い恐怖感を覚えたこと(甲16号証の1,乙6, 7号証),

(エ) Oに対して暴行し脅迫をしたのは,当時,原告両名の広報活動等を行っていたサンラ出版の社長兼編集長であったHらであったが,このOに対する脅迫等が行われた日に,Hら実行者,原告増田,原告会社の江尻社長らとで,ご苦労さん会が開催され(甲24号証,乙2・5号証),被告増田の妻でもある江尻がHに対して, 「少ないけど」ということで謝礼金を渡そうとしたこと(K証言),

以上の事実である。

ウ そこで,上記アの本件ブログ記事の内容と,上記イの認定事実とを比較検討すると,次のような相違点と一致点とが認められる。

(ア) まず,相違点であるが, (a)本件ブログ記事では,F訴訟の請求金額が7100万円と記載されているのに,認定事実では約4800万円程度の請求であったこと,(b)本件ブログ記事では,脅迫されたのは訴訟を提起したF本人であるかのように書かれているのに,認定事実では,脅迫されたのはFの友人で一緒に仕事をしていたOという者であること, (c)本件ブログ記事では,ご苦労さん会の後,原告増田がHに報酬を渡そうとしたと書かれているのに,認定事実では,Hに報酬を渡そうとしたのは,原告増田の妻で,原告会社の代表者であった江尻であること,(d)本件ブログ記事では,渡そうとした報酬額は100万円と書かれているのに,認定事実では,江尻は「少ないけど」と言って渡そうとしただけで, 100万円というのはKの想像であること,などの相違点がある。

(イ) しかし,本件ブログ記事と上記認定事実とを比較すれば, ①公認会計士であるFが原告両名に対して損害賠償を請求するF訴訟を提起したこと, ②このF訴訟を取り下げるよう暴力団員風の男が脅迫事件を起こしたこと, ④脅迫事件を起こしたHらは原告増田らとご苦労さん会を開催したこと, ④その際,原告会社の江尻社長がHに対して謝礼を手渡そうとしたことなどの事実については,ほぼ一致しているものということができる。

エ ところで,本件で争われている名誉毀損の成否は,言論等によって,その対象とされた者の名誉や信用等の社会的評価が低下させられたか否かが問題となるが,言論等による表現の自由は憲法によって保障されているものであり,その制約は必要最小限度に止めるべきものと考えられるから,そこで名誉穀損の成否が問われるべき事実が真実であるか否かについては,そこで摘示された事実の主要な内容や本質的な部分において真実と評価することができるか否かという観点から判断されるべきである。そして,そのような観点から本件ブログ記事に書かれた公認会計士脅迫事件について検討すると,その主要な内容,本質的な部分は,まさに,原告増田と原告会社の江尻社長が,暴力団員風の男を使って,公認会計士に訴訟を取り下げるよう凄むという,常軌を逸した無法な対策を講じたという事実であろうと考えることができるから,この主要な内容や本質的な部分において真実と認めることができれば,その他の点で多少の相違点があったとしても,違法性阻却の問題としては,摘示された事実は真実であると評価するのが相当である。

そこで,上記ウ(ア)の相違点について検討すると, (a)の点は,請求金額の違いであるが,この点については被告も7100万円ではなく, 4792万円余りの請求であったとして本件ブログ記事が正確でなかったことを認めているものの,いずれにしても高額の請求であることに違いはなく,本質的な相違ではないということができる。 (b)の点は,被害者が誰かについての違いであり,刑事事件としてみれば些細な違いとはいえないものの,民事訴訟を提起したら一緒に働いている同僚が脅迫され,自分自身が脅迫されるよりも怖さを感じたというのであって,脅迫を受けた人物の違いはその威嚇的効果という意味ではほとんど差がなく,脅迫があったことに変わりはないから,この点の違いを過大視するのも相当ではない。さらに, (c)の点では,江尻は原告会社の代表者であるとともに,原告増田の妻であるから,そのような江尻が謝礼を渡そうとしている以上,原告増由もこれに同意しているものと推認することができる(原告増田はご苦労さん会に出席したこと自体を積極的に否定しているわけではない。)ばかりでなく,一般の社会的評価として,原告増田が渡そうとしているものと理解することもできるというべきであって,この点で本質的な違いはないというべきである。 (d)の点は手渡そうとした謝礼の額についての違いであるが,社会的評価として重要なのは,脅迫の謝礼を渡そうとしたということであって,謝礼額の多寡は必ずしも本質的な問題ではないと考えることができる。そうすると,これらの前記(ア)の相違点は,本件の名誉毀損事件における違法性阻却事由としての事実性という観点では,主要な内容,本質的な部分での相違と評価するのは相当ではないというべきである。

オ しかも,本件では,これまでにも触れたとおり,公認会計士脅迫事件が起きた平成12年5月以降当時,Hは,原告両名の広報活動等を担当するサンラ出版の代表取締役で,原告増田とは親密な関係にあったことが認められ,仮に,原告両名がHらによる公認会計士脅迫事件に無関係であるならば,なぜ,その実行当日に,原告増田や原告会社の代表者である江尻らが参加してHらのご苦労さん会が設けられたのかについて合理的に説明することはできないことになる。

その後の事情ではあるが,原告増田は,平成15年1月ころ,Kとの電話の中で,自ら公認会計士脅迫事件について言及し, 「その,私の事件のときにもFはいってたんですけどね,その,プロの暴力団を使って,その,事件を取り下げろといって脅かしたということをね,私の裁判のときにもいってるわけですよ。」(87), 「やられたほうにしてみるとね,そのう,増田さんとの事件を取り下げろというふうに言われているわけだから,私がそれを言わしたと思うのは当然ですよね。」 (134), 「とにかく,Fさんのレコードもなければ,売り買いの報告もなければ,何もないんですから。いきなり7000万金よこせ,とこうきたわけですよ。ま,そのとおりの説明をしたんですよ。だからHさんも,そういう,まさに根も葉もない言いがかりみたいなことをFがやってきたという認識だったからね,だから,そんなつまらないことは取り下げなさいと,いわれたんじゃないかと,思うと。」, 「当時,非常に忠誠心というかね,私のために一生懸命やってたから,まあ,憤りを覚えられたのは,当然だったと思いますよ,と。無茶苦茶なのは,Fさんのほうなんだ。」 (140)などと発言している事実が認められるが,これらの事実は,Hは原告増田の意を汲み,被告増田もHの考えていることを了解し,両者相互に気心を通じた上で,Hが中心となって本件公認会計士脅迫事件が実行されたものであることを示しているものと考えることができ,この点からも原告両名が本件公認会計士脅迫事件に関与していたことは明らかというべきである。

カ そうすると,本件では,原告増田と原告会社の江尻社長が,暴力団員風の男を使って,公認会計士に訴訟を取り下げるよう凄むという,常軌を逸した無法な対策を講じたという事実は真実であり,本件ブログ記事は,その意味で真実を述べているものと評価することができる。

キ もっとも,被告は,平成14年に「財界展望」.に本件財展記事が掲載された後,原告両名に対し,平成14年10月31日付けで,本件財展記事が原告両名の「名誉・社会的信用を著しく穀損するもの」であることを認めて, 「多大のご迷惑をお掛けしたことを衷心からお詫びします。今後は,二度と貴殿らの名誉を毀損する記事を執筆しないことをお約束する」との謝罪文(甲4号証)を原告両名に交付しているところ,この本件財展記事の中に本件公認会計士脅迫事件が含まれていることは事実であるから,その前提となった事実関係が真実ではないことを一応は推認させる。しかも,被告が謝罪文まで交付して本件公認会計士脅迫事件が真実ではないことを認めていたのに,その後,それを簡単に覆せるとするのが相当ではないことも明らかである。

しかしながら,事実認定の問題としては,謝罪したといっても,その謝罪対象が虚偽であることが当然に確定されるわけではなく,そのように推認されるにとどまるものであるから,反証を許さないものではなく,謝罪が本意ではないことや,その前提となった事実の真実性が明らかになれば,謝罪を覆すことも許されるというべきである。そして,本件においては,被告本人尋問の結果によれば,そもそも被告自身はこのような謝罪文を原告両名に交付することには反対であったものの,財界展望社との関係で,やむなく謝罪文を交付したものであることが認められる。すなわち,被告自身は謝罪に反対であったが,本件財展記事の一部に不正確な部分があったこと(原告増田がロサンゼルスの裁判所で実刑1年, 5年の保護観察の判決をうけて,上告が棄却されていると記載したが,実際には原告増田が司法取引に応じて有罪判決は取り消されていたこと)が判明した上, 「財界展望」を出版した財界展望社にも原告両名の代理人である佐藤弁護士から謝罪要求があり(乙9号証添付の資料5),平成14年8月28日には, 2日後の30日までに謝罪広告の掲載と慰謝料500万円の支払に応じなければ,謝罪広告の掲載と慰謝料合計5000万円の支払を求める訴訟を提起するなどとする強硬な警告文書が出されたり(同資料8),その後も執拗に謝罪等の要求がなされたことから,財界展望社がそれ以上のトラブルを嫌ったため,経済ジャーナリストとして財界展望社との関係を考慮せざるを得ず,苦渋の決断の結果,上記謝罪に応じたという経過であることが認められる。

ク 以上のところを総合的に勘案すれば,本件ブログ記事に掲載された公認会計士脅迫事件については,いくつかの点で真実に反する部分がないわけではなく,正確性を重んじるべきジャーナリストの書いた記事として詰めの甘さを指摘されても致し方のないところもないわけではないが,記事の内容は公共性の強い事項に関連するものであり,しかも,その主要な内容や本質的な部分はほぼ真実であると認めることができるから,本件ブログ記事のうち公認会計士脅迫事件に関する部分については,違法性が阻却されるというべきである。

(3)公認会計士脅迫口止め事件関係

ア 次に,公認会計士脅迫口止め事件として問題にされている本件ブログ記事は,別紙3 「ブログ記事本文」の⑤ないし⑨に記載のとおりであって,そこで述べられているもののうち,原告両名に関する主要な内容は,原告増田が弁護士と共謀して,公認会計士脅迫事件に関する警察の捜査に対し,その実行犯であるHが原告増田の関与を否定するよう, Hの知人であるKに依頼したという事実(⑤及び⑥)である。

イ そして,後記の証拠によれば,公認会計士脅迫口止め事件については,以下の事実を認めることができる。

(ア) 原告増田は,平成14年12月ころまでに,前記の公認会計士脅迫事件につき,神奈川県警高津警察署から出頭を求められ,同署に任意出頭して事情を尋ねられたが,同事件への関与を否定した(甲24号証,乙25号証)。

(イ) 原告増田は,高津警察署で事情聴取を受けた後,平成15年1月から2月上旬にかけて,Kと電話で話をした際, 「Kさん,いい人だからね,いっぺん,その,うちの味方なんだからね」などと発言するとともに,公認会計士脅迫事件についても言及し,自分が高津警察署に呼ばれて事情聴取をされたことなどを話した(前記(2)オのとおり)。これに対し,Kは,Hが警察から原告増田がHの名前を出したと聞かされて怒っていることなどを原告増田に伝えたりした。このときの原告増田とKとの会話内容は,必ずしもその趣旨が明確ではないところも少なくないが,原告増田は,Kに対して,原告増田が信頼している佐藤弁護士に会ってくれるよう依頼するなどした(甲24号証,乙25号証)。

(ウ) Kは,平成15年2月7日,原告増田から依頼されていたこともあり,佐藤弁護士の事務所に訪ねて行った。その席で,佐藤弁護士からKに対して,Hがサンラ出版の株券(甲18号各証)を無断で発行し,Kに譲渡した分を返還するよう求められた。Kは,自分にも言い分があることを述べたが,佐藤弁護士から何度か大きな声で厳しく叱責されたり,そのようなことは口外しない方がいいですよなどと言われたりしたため,恫喝されたものと感じ,佐藤弁護士に対してサンラ出版の株券を返還することを約束した。この間,Kと佐藤弁護士との話は約2時間にも及び,公認会計士脅迫事件などについても話題になった(K証言)。

(エ) また,Kは,先後関係は必ずしも明確ではないものの,佐藤弁護士から電話で,原告増田は有名な人だから新聞沙汰なんかになったら困るので,Hの方は何とかならないのかという趣旨の話をされたため,公認会計士脅迫問題について原告増田の名前を出したりしないようKからHに対して説得するよう言われたものと理解した(K証言)。

(オ) Kは,このようなことを受けて,Hが高津警察署に出頭する前に,Hに対して電話をして,原告増田やその代理人である佐藤弁護士が公認会計士脅迫間題でHの口から原告増田の名前が出るのではないかと心配している,サンラ出版の株券問題や出資法違反の共犯問題等もあり,公認会計士脅迫事件について原告増田が関与したことについては,高津警察署では何も言わないようにと強く説得した(乙5, 28, 30号証,K証言)。

(カ) Hは,Kの説得を受け入れ 平成15年2月10日ころに高津警察署に出頭して,公認会計士脅迫事件について取調べを受けた際,自分の判断で公認会計士脅迫事件を実行したものであるとし,原告増田が同事件に関与したことについては,最後まで否認した。

ウ 上記認定の事実によれば,Kは,原告増田やその意を受けた佐藤弁護士から,公認会計士脅迫事件を実行したHに対して,警察での取調べ等の際に原告増田の名前を出さないよう強く説得するよう依頼されたものと理解し,その旨,Hを説得し,Hは,Kの説得を受け入れて,高津警察署での取調べ等において原告増田の関与を否定し続けたことが認められる。

したがって,本件ブログ記事⑤ないし⑨の事実は,ほぼ真実であると認めることができる。

エ これに対して,原告両名は,Hの証言書(乙30号証)はもとより,Kの陳述書(乙7, 28号証)や同人の証言は到底信用できないし,佐藤弁護士も,Kのいうことをただ聞いていただけで,Kに公認会計士脅迫事件についてHに口止めをするよう言ったことはないなどとして,これを否認しているので,この点について検討しておく。

(ア) まず,Hは,前記のとおり,平成13年9月ころまではサンラ出版の代表取締役として原告両名の広報関係を担当するなどしていたもの、の,独断でサンラ出版の新株を発行しようとしたり既発行の株式を売買しようとしたりしたため,原告増田らとの対立が深まり,同年9月には代表取締役を退任して,その後は自ら投資顧問業を営む会社(ブロードバンド)を設立したものの,同社の経営にも失敗し,平成15年2月ころには原告両名との関係は冷え切っていた。また,Kは,もともとHの友人で,原告増田とはHの紹介で知り合ったという間柄である上,その後,Hは,ブロードバンドの代表取締役をKの長男に譲り,K自身も同社の取締役であった(以上につき,乙5号証,甲16号証の1,K証言等)。

このような事情に照らし考えれば,Hは平成1 5年2月当時は原告増田に対して不満を抱いており,また,Kも原告増田に対して必ずしも好感情を抱いていたわけではないことが明らかであり,HやKの供述等をそのまま鵜呑みにすることは,一般的に相当ではないというべきである。

(イ) もっとも,原告両名の主張は,原告増田が問題の公認会計士脅迫事件に何ら関係していないということを前提としているものであるが,本件の客観的事情としては,前記認定のとおり,原告増田は,この公認会計士脅迫事件に関与していることが明らかである上,自らが高津警察署で事情聴取を受けた際には,厳しく追及されたにもかかわらず,その関与を否定し続けて逮捕等を免れていたのであるから,早晩,Hも警察の取調べを受けるであろうことは容易に思い当たっていたはずである。そして,その当時,関係が悪化していたHから,公認会計士脅迫事件に関与していると言われることは脅威だったはずであり,できれば,Hの口から自分の名前が出ないように口止めをしたいと考えるのは自然の成り行きである。しかも,原告増田は,自ら刑事事件専門の弁護士であると述ベている佐藤弁護士を信頼し,何くれと相談していたのであるから,高津警察署で事情聴取を受けたことについても当然に相談していたはずであり,佐藤弁護士としても,公認会計士脅迫事件の捜査が進んでいたことは理解していたはずである。それにもかかわらず,原告増田とHとの関係は悪化していて,原告増田からHに対して直接口止めをすることができない状況であったというのであるから,Hと親しく,Hに対して一番説得ができるKに口止めを依頼するというのは,合理的な選択であるとも考えられるのであって,原告増田等がKに対して口止めを頼むというのは動機として十分に首肯しうるところである。

(ウ) しかも,Hは,平成15年2月10日に高津警察署に出頭する前には,警察からの電話で原告増田がHがボスだと言っていると聞かされて怒っていたというのであるから,仮に,何らの口止めもなければ,警察での取調べの際に,原告増田が関与していたことを述べてしまうのが普通ではないかと思われるのに,実際には,Hは原告増田が公認会計士脅迫事件に関与したことを否定し続けたのであるから,Hに対して,この点について事前に何らかの働きかけがあったと考えるのが自然である。そして,本件では,そのような働きかけに相当するものとしては,Kによる口止めの説得以外には見あたるものがないのであるから,KからHに対してそのような口止めがなされたものと認めるのが相当である。このような事実に加えて,HやKが,今になって,直接利害関係もない被告のために虚言を弄さなければならない特段の必要性は見あたらないことを考慮するならば,他のことはともかく,本件で問題となっている公認会計士脅迫事件や同口止め事件については,多少の勘違いや誇張があったとしても,全くありもしない事実を述べているものと考えるのは,経験則に照らして相当ではないというべきである。

(エ) ちなみに,Kは,佐藤弁護士の事務所を訪ねて行った際や電話等で,同弁護士から大きな声で激しく叱責され,恫喝された,公認会計士脅迫事件に原告増田が関与したというような嘘を言ってはいけないなどと強く言われたなどと供述しているのに対して,佐藤弁護士は,自分は何も言わずに聞いていただけだとこれを否定している。

しかしながら,事務所でも約2時間も話をしたほか,電話でも話をしているのであるから,佐藤弁護士自身としてKを個喝したとの意識はなかったとしても, 80歳に近かったKにおいて佐藤弁護士から恫喝されたと感じたということもありえないことではなく,Kに対して公認会計士脅迫事件については何も言わなかったとの佐藤弁護士の説明をそのまま受け入れることはできないといわざるを得ない。

(オ) 上記のとおり,HやKの陳述書等も,上記に摘示した事実の限度においては信頼性があり,これを否定する原告両名の上記主張を採用することはできない。

オ これまでに認定し,説示したところを総合的に勘案すれば,原告増田が,公認会計士脅迫口止め事件に関して,自ら又は原告増田は公認会計士脅迫事件に関与していないと信じている佐藤弁護士を介して,Kに対し,Hが警察での取調べに際して原告増田が関与しているなどと述べないように口止めを依頼したものと認めることができ,本件ブログ記事に記載された公認会計士脅迫口止め事件についても,その主要な内容や本質的な部分はほぼ真実であるということができるから,同部分についても,違法性が阻却されることは明らかである。

(4)まとめ

そうすると,本件ブログ記事は,いずれも公共の利害に係るもので,かつ,被告の執筆の目的は専ら公益を図ることにあり,しかも,そこで摘示された事実は,その主要な内容,本質的な部分において真実であると認められるから,本件ブログ記事を執筆し掲載した被告の行為に違法性は認められず,不法行為は成立しない。

4 結論

以上の次第で,原告両名の本件各請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法6 1条, 6 5粂1項本文を適用して,主文のとおり判決する。

                    東京地方裁判所民事第2 3部

                      裁判長裁判官   須  藤  典  明
                          裁判官   高  橋  伸  幸
                          裁判官   河  野  一  郎

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