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2008/11/17

プラスチック製でも「真正拳銃」にしてしまう拳銃捜査の怪

『平成20年上半期の薬物・銃器情勢』(警察庁)によると、今年上半期に全国の警察が押収した拳銃の総数は254丁だった。

拳銃の押収状況は、あいかわらず低迷をつづけているが、警察庁は前年同期にくらべて10丁(4.1パーセント)増加したことを指摘。その理由について、このような分析をくわえている。

「平成19年中の暴力団による抗争事件等の発生で、暴力団組織の実態把握の徹底によりけん銃に関する核心情報の収集が図られたほか、社会を震撼させるけん銃を使用した凶悪犯罪が発生したことで、けん銃の危険性が国民の間で広く再認識され、一般人からの届出等が増加したことなどの影響が、現在も継続しているものと考えられる」

Img008近年、「社会を震撼させた凶悪な拳銃使用事件」に、ほとんど例外なく暴力団の拳銃が使われていることは事実だ。ところが、今年上半期に「暴力団構成員等」から押収された拳銃は、わずか102丁。押収丁数全体に占める割合は40.2パーセントだった。約6割が「暴力団構成員等」以外(不明を含む)から押収されたわけだが、この構成比率は、かつてならマスメディアが「一般市民に拡がる銃の恐怖」などと騒ぎ立てたに違いない。しかし、凶悪事件に使用されているのは暴力団の拳銃である。その現実にかんがみれば、いかに警察の拳銃捜査が倒錯しているかがわかるはずだ。

「暴力団構成員等」以外から押収された拳銃のうち、真正拳銃は143丁。その半数近くが、以下のような代物だった。

■旧軍用拳銃-45丁(31.5%)

■プラスチック拳銃等-11丁(7.7%)

■古式銃-6丁(4.2%)

このうち旧軍用拳銃について、警察庁はつぎのような定義をもとに統計上の分類をしている。

「旧軍用けん銃」とは、けん銃の型式や発見時の状況等から、戦前・戦中に旧日本軍等から支給されていたものを終戦後も放置していた旧式けん銃をいう。主な銃種としては、日本製の南部14年式やベルギー製のブローニング等があり、外国製のものは概ね100年前の型式のものが多い。

旧軍の拳銃が犯罪に使用されたのは終戦後のことだ。現在、警察庁の統計にカウントされているのは、従軍者の遺族から警察が〝タナボタ式〟に領置した「遺品」がほとんど。そして古式銃は、おおむね慶応3年(1869年)以前に国内で製造、もしくは外国から伝来したアンティークだ。これも、使用事件に結びつくことは皆無にひとしい。

元軍人のおじいさんの形見も、収集家や博物館が所蔵する20世紀以前に製造された美術品や骨董品も、真正拳銃であることに違いはない。適合実包が入手できたとして、あとは銃のコンディションさえよければ実射はできる。しかし、警察発表をもとに銃器情勢を報道してきたマスメディアは、「プラスチック拳銃」が真正拳銃のカテゴリーに分類されているのか、なぜこれまで疑問に思わなかったのだろうか。プラスチック製では、無改造のまま実弾を撃てるわけがないことぐらい、素人にもわかりそうなものだ。

Twm500bkl この「プラスチック製拳銃」の一例が、先月に警視庁組織犯罪対策5課が遊戯銃メーカー『タナカ』(東京都北区)を家宅捜索し、摘発に乗り出した「S&W(スミス・アンド・ウェッソン)M500」のカシオペア・タイプというエアガンだった。低圧ガスを注入し、その圧力で樹脂製のBB(球状)弾を発射するリボルバー型。実銃を模した外観はリアルだが、ABSという耐衝撃性の樹脂で製造されている。構造は、あくまでガス式であって、装薬銃ではない。威力も、市販されている同種のガスガンとかわりなく、無改造では人畜を殺傷する能力はない。

ところが、これを警視庁は押収し、科捜研(科学捜査研究所)で「拳銃と同等の殺傷力がある」と鑑定したのだ。

タナカは、同型M500のペガサス・タイプというガスガンも製造・販売しているが、こちらはおとがめなし。現在も市販されている。双方ともに材質はABS樹脂で、本体の強度にも威力にも差はない。警視庁が、カシオペア・タイプだけを捜査の対象とした理由は、構造の特徴にあった。

従来型のペガサス・タイプは、本体に組み込まれたタンクに注入したガスの噴出圧を利用してBB弾を発射する仕組みなのに対し、カシオペア・タイプは回転式弾装に薬莢型の蓄圧式カートリッジを装てんする方式。その構造が、実銃のリボルバーと酷似している。

YouTube - タナカ M500 カシオペア

今回のM500と類似したケースに、モデルガンの老舗メーカー『国際産業』が製造・販売した「S&W・M29パワーアップマグナム」という蓄圧式カートリッジのガスガンが、'86年に真正拳銃と認定された事件がある。このM29が、今年上半期に押収された「プラスチック製拳銃等」の正体だ。真正拳銃と認定されてから20年あまり経ったいまも、M29パワーアップマグナムはインターネット・オークションなどを利用してマニア間で取り引きされることがあり、警視庁などが捜査情報の提供を呼びかけている。

[警視庁] インターネットオークション利用による違法銃器等販売事件の摘発

M500カシオペア・タイプは、薬莢型カートリッジ後方の中心部を打つM29パワーアップマグナムとは構造が異なる。装薬実包を激発できないように配慮して、バルブを前方から開放する仕組みになっていた。「蓄圧式カートリッジのガスガンはリスキー」という業界の常識がありながら、それを製品化したメーカー側には、脇の甘さがあったのかもしれない。しかし、無改造の製品の摘発に踏み切った警察側のやり方にも疑問がある。

警察発表をそのまま報じるメディアの論調は、さも出荷時の状態のままで殺傷力があるかのように錯覚させる。

金属弾発射で新型エアガンに殺傷能力か 警視庁捜査(産経新聞) - 11月 9日

新型エアガンに殺傷能力か=銃刀法違反容疑で製造会社捜索-800丁押収・警視庁(時事通信) - 11月 9日

新型エアガンに殺傷能力、800丁を警視庁押収(読売新聞) - 11月 9日

エアガンに殺傷力 銃製造会社を捜索 東京(産経新聞) - 11月11日

<新型エアガン>拳銃並み殺傷能力…800丁押収 警視庁(毎日新聞) - 11月10日

だが、「薬きょうの強度を上げ、ガスの代わりに火薬を詰めた場合、金属弾を発射することが可能になり、拳銃と同様の殺傷能力がある」と、警察が発表しているように、実際には無改造で装薬銃として使用することは不可能なのだ。

科捜研は、特製の薬莢や装薬弾を自作したり、激発装置や銃身を補強するなど、「鑑定」の域を超えた〝改造〟を当たり前のように行なう。改造を施したところで、「プラスチック製拳銃等」の性能は実用に値しないし、社会を震撼させる凶悪犯罪に使用されたためしもない。それでも科捜研は、もてる技術の粋を結集して改造に精をだす。無改造で「殺傷力を有する」と鑑定すれば、警察は手軽に「真正拳銃」の押収丁数を増やすことができるからだ。

もとがプラスチック製のオモチャでも、それを不法に改造して殺傷力をもたせたものを所持や売買をする者がいれば、「改造拳銃」として厳しく取り締まるのは警察が果たすべき正義。だが、そのままでは撃てないオモチャを「真正拳銃」と偽るのは詐欺だ。

「プラスチック製拳銃」で押収丁数は増えたが、暴力団の真正拳銃によって死傷者が増加するという、本末転倒な結果をまねくことは避けてもらいたい。

ASGKからのお知らせ

                      2008年 10月 31日

               ASGK 日本遊戯銃協同組合

                     理事長 永吉 勝美

(株)タナカ カシオペア製品について

 2008年10月8日、ASGK組合員である(株)タナカがお得意様各位として流通業者様宛に1通の文書を配布いたしました。文書には、「銃刀法違反の疑いがあるとの理由で警察の捜査を受けました。」とあり、同社製カシオペアタイプ製品の出荷停止と流通在庫品回収のお願いをいたしております。文書は同社のホームページにも掲載されました。

流通在庫の回収はすでに完了しており、現在はホームページ上の文書はありません。

10月22日当組合事務所におきまして警察の担当の方から、捜査などに関する状況を伺いましたのでご報告いたします。

( 経緯 )
10月7日(火) (株)タナカのカシオペアタイプ製品などが押収されました。
10月8日(水) (株)タナカがカシオペアタイプ製品の出荷停止と流通在庫品回収のお願い文書を出しました。
10月22日(水)当組合事務所におきまして、警察の担当の方から、捜査などに関する状況を伺いました。

( 現在の状況 )
カシオペアタイプ製品は、火薬を使用できるようにした薬莢をセットすると発火する可能性がある、という問題点につき警察の研究所で検査をおこなっているようです。
(株)タナカの社長や従業員は捜査当日に事情聴取を受けましたが、その聴取状況から、7月の発売直後から警察当局はM500タイプの検査をおこなっていたと推測されます。

( カシオペアタイプ製品が発売されるまでの流れ )
本年3月下旬に、(株)タナカ(以下、タナカと略します。)から、組合宛に自主規約の変更を検討してほしいという内容の文書が寄せられ、続いて基本構造図や分解構造図、シリンダー周辺の模型などが送られてきました。
通常は、各社が開発を進めている段階において、競争相手でもある他の組合員に対して新製品の特徴や構造を開示することはありません。タナカの新製品の構造は現行の組合自主規約にはない新規のカテゴリーに属するものであって、検査の申請が出来ない状況にありました。検査の申請が出来なければ合格することはなく、したがってASGK証紙も発給することができません。その場合には今回のタナカのように、組合に対して検査規約の変更や新設を申請することが必要となります。しかし規約の変更や新設は総会の決議事項であって、半年単位の時間を要することが多く、実際のビジネスサイクルには追いつかないのが実情です。そのような時は、組合で規約の検討が行われている間、各社は自己の責任においてASGK証紙なしで商品を販売することになります。組合は自主規約にない商品だからといってその発売を止める権限を持っていません。
過去に例もなく規約にも想定されていない全く新しいカテゴリーに属する新製品が誕生するときには、このような中間的な状況が発生します。今回のタナカ新製品はその一例であって、当然のことながらASGK証紙は貼ってありません。またASGKというマークは組合の登録商標であって、検査に合格しない商品にASGKの刻印などを付すことは許されません。タナカは金型に彫ってあったASGKの刻印をすべてはずして新製品を発売したと聞いています。それは組合の権利を尊重した正しい行動です。
組合員から、規約に載っていない新しい製品の検査規約を制定してほしいという要望があった場合には、ASGKはその新製品が一般消費者の安全を脅かす恐れがないかを検討し、組合員の合意が得られれば新規に検査規約を制定して検査をおこなえるようにします。そして検査合格後にASGK証紙を発給します。法的に問題があることが明らかである製品でない限り、現行の規約にない、という理由だけで新製品の出現を妨げることは許されません。できるかぎり新製品が世に出られるように、ASGKは新規約制定を含め最大限の努力をし、協力をします。安全対策の確立に努めると共に、組合員の自主的な経済活動を促進することが組合の目的です。
3月下旬に規約変更の要請があり、次いで模型や図面が送られてきましたので、4月上旬に理事全員が組合事務所に集まりタナカの新製品に関する検討会を開きました。
その結果は、現状では自主規約を変更することは難しいのではないか、組合員の合意を得ることは難しいのではないかというものでした。

( カシオペアタイプ製品の特徴 )
カシオペアタイプ製品の特徴は、薬莢型の小型タンクにガスを注入し、外部から力を加えてガスバルブを開放する、蓄圧式カートリッジを使用する拳銃型玩具銃であって、現行のASGK検査規約には載っていない新規のカテゴリーに属する製品である、という点にありました。従いまして検査をおこなうには新規約の制定が必要となります。
 ASGKは「エアソフトガン」という商標権を持っている団体であり、文字通りエア(あるいは低圧ガス)の力を使って球状弾を飛ばす玩具銃、遊戯銃、競技銃などを製造する業者が加入している団体です。火薬を使って弾丸を発射する銃は本来的に想定していません。
 タナカから送られてきた模型や図面を検討したところ、玩具銃としては新規でとても興味深く、エアガンとしての危険性は感じられませんでした。発想も素晴らしく、基本構造もとても良く研究されていました。
蓄圧式カートリッジを使用する玩具銃で注意しなければならないのは、炭酸ガスを注入された場合に危険性はないか、という点です。消費者の安全を考えるときに市場で簡単に入手することができる炭酸ガスは最も注意を払わなければならない相手です。
タナカの新規方式はハンマーに係るバネAの力が、本体側に内蔵された部材1に伝わり、次にシリンダーに内蔵された部材2に伝わり、最後にシーソーのような部材3に伝わって力の方向が逆転し、蓄圧式カートリッジの内側のパイプに伝わってバルブを前方から開放する、という構造でした。
いくつもの部材を介して力が伝達されるので伝達効率はあまり高くなく、シーソーのような部材3の実質ストロークも3ミリ程度であって、仮に炭酸ガスが注入されたとすると直径6ミリの断面積にかかる力は10kg以上となり、バネAの力だけではバルブの開放ができないことは明らかでした。またカートリッジの容量は小さく、現在流通している134Aガスを使用するとしても準空気銃に該当する危険性はないと感じました。
このままでもエアガンとして十分に安全ではないか、という意見を持つ理事もいました。
しかし、蓄圧式カートリッジを用いることには言いようのない不安がありました。

( 蓄圧式カートリッジに関する過去の記憶 )
エアガン業界にはコクサイM29事件(昭和61年・1986年)とアサヒM40A1事件(平成6年・1994年)というふたつの苦い記憶が残っています。両方とも蓄圧式カートリッジを用いるものでした。
コクサイM29は拳銃型玩具銃で、シリンダーに入れた蓄圧式カートリッジを後方から直接打撃してバルブを開放する方式でした。何の工夫も安全性への配慮もなく、実銃の構造と全く同じで、撃針がカートリッジの後方中心部を直接打撃する銃でした。20年以上前のことです。
アサヒM40A1は大型のライフル銃で、鉄製の薬室に入れた蓄圧式カートリッジを前方から打撃してバルブを開放する方式でした。カートリッジを打撃するための太くて長い銃身は可動式でとても重く十分な慣性があり、その銃身を動かすための撃発用スプリングもとても強力でした。カートリッジに炭酸ガスを注入するための別売パーツなども出現してしまい、またその炭酸ガスの圧力に負けずにバルブを開放できるだけの力と構造とを有していたので、エアガンとしても危険なものでした。またその打撃力は22口径の実弾を発射できることが実証されたほどに強力であって、鉄製の薬室は22口径の実弾発射を繰り返しても十分に耐えられるほど丈夫なことが実証されテレビで報道されました。
製造者であるアサヒファイヤーアームスは当時ASGKの要職にあり、M40A1を危険と指摘した組合員の反対を押し切って勝手な規約を自ら作り、無理矢理にASGK合格として証紙を貼り、販売してしまった経緯があります。大変残念なことですが、これはASGKの汚点です。しかし現在のASGKには、M40A1の合格強行突破に関わった者はひとりもいません。M40A1関係者はすべてASGKを脱会しています。
 M40A1が発売されてから1年以上が経過して、ある小売店が火薬を入れたM40A1用のカートリッジを密造し、売り出すという事件が起きました。これがきっかけとなってM40A1は実銃と認定され回収となりました。

( タナカ カシオペア製品と、アサヒM40A1との比較 )
 コクサイM29と比較することに意味はありません。タナカ方式は撃針部分が本体を貫通する構造ではないので、撃針が薬莢に直接接触することはないからです。
蓄圧式カートリッジに前方から力を加えてバルブを開放する方式、と考えると方式的にはアサヒM40A1と似ています。しかし、アサヒM40A1は十分な慣性を有する重い銃身を強力なスプリングで移動させてカートリッジの前方から激突させていますが、タナカ方式では大きな慣性を有する重い部品は存在せず、スプリングの力もM40A1とは比較できないくらいに弱いものです。しかも後方からの力を複数の部品を介して伝達し、最終的にはシーソーのような小さな部材で力の方向を逆転させていますので伝達効率は悪く、とても22口径のような実弾を発火させる力はありません。その点では全く異なります。勿論、タナカ方式は炭酸ガスの圧力を開放する力もありません。
では、なぜASGKとして公認することに不安があったのでしょうか?

( 当初のタナカ・カシオペア方式に見られた不安点 )
 蓄圧式カートリッジに前方から力を加えてバルブを開放する方式においては、加える力の性質に注意しなければなりません。大きな打撃力は危険です。M40A1には大きな打撃力がありました。22口径の実弾を発火させ、炭酸ガスの高圧力を開放し、火薬入り密造薬莢を発火させてしまう打撃力です。タナカ方式には22口径の実弾を発火させたり、炭酸ガスの高圧力を開放してしまうような大きな打撃力がないことは明らかでした。
 しかし、もしかすると、火薬入り密造薬莢ならば発火させてしまう打撃力があるのかもしれない、という漠然とした言いようのない不安が残りました。火薬入り密造薬莢、というものを見た者はASGKにはいないので、それがどれくらいの力で発火するのかがまったく分かりません。火薬入り薬莢というものを作って実験することは法律で禁止されていますから実験してデータを収集したり分析したりすることも許されません。とにかく数値による確認が取れないのです。組合規約の大半は重さや硬さ、速さ、強さなどの数値で決められています。数値の分からないものを勝手に想像して何らかの判断をして、それに対して良いとか悪いとかを適当に言うことは組合としてはできません。
分からないけど、なんとなく不安だからその製品を売るのをやめてください、これも無責任すぎて言えません。企業が数千万円をかけて真剣に研究開発し製造する商品に対して、なんとなく不安だから、は数千万円を廃棄させる理由にはなりません。しかし火薬入り密造薬莢というものが過去に存在したことも事実です。
発火性能が数値化できず、構造も想像する以外に理解できない火薬入り密造薬莢を想定して組合の規約を作ることはできません。法的に許可されていない火薬入り薬莢を組合やタナカが作って実験することもできません。どのような力で発火するのか全く分からない、火薬入り密造薬莢というものを相手にタナカはどう立ち向かえば良いのか、組合として公式なアドバイスをタナカに伝えることは不可能でした。

( タナカに対する提案 )
 組合としては、タナカの新製品を肯定することも否定することもできません。しかし何もしない、という選択肢もありませんので、検討会に集まった理事の抱いた言いようのない不安感を含め、私が個人的な意見を加えてタナカに幾つかの提案をいたしました。
 具体的な提案を幾つか示し、それらの提案を参考に、でき得る限り打撃力を弱める努力をしてもらえないか、というのがその内容です。その提案に数値の裏付けはありません。
何らかの対策をしておかなければ不安。火薬入り密造薬莢、という数値で捕らえることができないものに対して、とにかく何かしておかなければ不安、それしか伝えようがありませんでした。

( タナカが当初案に比べて改良を加えた部分 )
 私の個人的な意見を多く含む提案に対して、タナカは真剣に社内会議を開いて対策を考えてくれました。私の提案のほとんどは力の伝達経路に幾つかのクッションを持たせるという、打撃力の低減案に関するものが主でしたが、それらに加えタナカはバルブ開放のストロークが3ミリ以上あったものを限界まで追い込み、実質ストロークを1ミリ近くまで縮めるという改良をした、ということを発売後に聞きました。とても大きな低減効果があったと考えられます。生産直前の時期にあったにも関わらず、タナカはできる限りの努力をしてくれました。

( ASGK公認は可能か )
 しかし、だからといってASGK公認となれるわけではありません。残念ながら、なんとなく不安、という部分が残るからです。

( なんとなく不安、の正体は何か )
 不安の正体は、火薬入り密造薬莢、というものです。それは自然と生まれてくる訳ではありません。それを作り出す過激な者がどこかにいるのかもしれないのです。
 M40A1のときに出現した火薬入り密造薬莢は、ある小売店が営利目的で作ったものでした。数百発を販売していたと当時聞いた記憶があります。悪意のある者は、そのようなものを作って販売すれば社会的な安全が脅かされることを承知で行動してきます。そして彼らは、悪意と共に知識と技術を持っています。

( タナカはなぜ家宅捜索を受けたのか )
 M40A1で発火する火薬入り薬莢を作ることは、実はあまり難しくないのかもしれません。とにかく22口径の実弾を発火させることができたほどの、強力な打撃力を有していたのですから、かなりラフな構造でもよかったのでしょう。
 しかし、タナカのカシオペアタイプ製品で発火する火薬入り薬莢を作ることは、かなり難しいのではないでしょうか。もともとM40A1とは比較にならないほど弱い打撃力しかない上に、当初の設計からかなりの改良が加えられ、打撃力は相当低減しているはずです。力の伝達経路にふたつのクッションが加えられ、最終ストロークも3ミリから1ミリ程度へと極めて短くなっています。その厳しい条件下で火薬を発火させることはそれほど容易なことではないように思えます。火薬を発火させることを目的として作られたモデルガンでさえ不発があります。ましてや火薬を発火させないように努力して作られたタナカのエアガンで発火させるのは極めて難しいことなのではないでしょうか。
しかし、警察の担当の方から説明を受けましたが、それでも発火する可能性があるとのことです。警察がわざわざそのような発火しやすい薬莢を製作して玩具銃を実銃に仕立て上げるとは考えられません。でも現実にはそのような発火しやすい火薬入り薬莢が警察の手元にはあるようです。
M40A1の発売後、1年余りが経過してから火薬入り密造薬莢が登場したのですが、それにははっきりとした営利目的がありました。今回は違います。タナカのカシオペアタイプ製品で発火する火薬入り密造薬莢がどこかで売られたとか、インターネットで売られたとか、あるいは誰かがどこかで見たとか、そのような情報はいっさいありません。つまり、今回の事件は営利目的ではないような気がします。

( 警察の捜索について )
タナカに対しておこなわれた捜索は正しいものだったと思います。しかし安全な玩具銃を作ろうと努力したタナカが罪に問われるかもしれないと考えると、やりきれない気持ちです。
今回の件はとても残念なことであり、とても悲しいことです。新しい可能性を持った玩具銃がひとつなくなりました。火薬入りの密造薬莢を入れられても発火できないようにとタナカが企業努力したにもかかわらず、過激な者はその上を行く技術で発火できる薬莢を密造したのでしょうか。前述したような理由でASGK公認は難しかったのですが、業界の方もファンの方も、タナカの新製品を歓迎してくれていました。本当に残念です。

( 薬莢式のエアガンはすべて危険なのか )
 薬莢がストローのように貫通したパイプ状であって、球状弾をパイプ内部に保持するだけのようなタイプは20年以上の歴史がありますし、世間的にも十分に認知されている玩具銃だと思います。大きな事件を起こしたという記憶もありませんので特に問題はないと考えています。
しかし、薬莢に対して何らかの力が外部から加えられて、薬莢の一部が動くようなタイプのものは、十分に気を付ける必要があると思います。
今のような状況では、ASGKがそのようなエアガンに対して新たな検査規約を制定して検査をおこない、それを合格と認定することはないでしょう。

以上で報告を終わります。

とても長い文章になってしまいましたが、今回の事件は業界にとって悪夢のような事件であって、簡単な報告書だけでは表しきれないものでした。
ASGKは法律を遵守し、常識の範囲において活動をしています。
今後新しいコンセプトで遊戯銃を開発するときには、今まで以上に細心の注意と配慮をして対応していかなければならない事をあらためて認識しているところです。
この報告書をご覧になって、ご意見などがございましたら、ハガキや封書で組合宛にお送りください。寄せられたご意見に対して返事を差し上げることはできませんが、皆様からのご意見を大切にし、今後の組合活動につなげてゆきたいと考えます。
なお組合常勤の事務員は1名しかおりませんので、電話やFAXでのご質問などには十分な対応をとることができません。なるべくハガキや封書をご利用ください。
 今後ともASGK日本遊戯銃協同組合を応援してくださいますようお願い申し上げます。

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