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2009/05/05

弁護士の「誠実義務」

東京弁護士会所属の山本至弁護士に、執行猶予なしの実刑判決(控訴中)を言い渡した宮崎地裁は、その判決のなかで「暴力団員との交際を通じて、弁護士としての規範意識や倫理観が鈍麻していた」と指摘した。

この判決の事実認定が正しく、証拠隠滅や証人威迫などの行為があったのだとすれば、弁護士であろうがなかろうが関係ない。犯罪なのだから、一般社会人としての規範意識や倫理観を欠いているといわざるを得ない。それを裁判官が、あえて「弁護士として」とつけくわえたのは、「弁護士倫理」の倒錯した解釈に警鐘を鳴らす意味を含んでいるように思える。

刑事弁護において、弁護人の職務はつねに「誠実義務」という名のパラドックスをはらんでいる。「誠実義務」とは、被告人の利益と権利のために忠実に、最善を尽くす義務のことだ。この義務について、早稲田大学法科大学院客員教授の佐藤博史弁護士は、著書『刑事弁護の技術と倫理』(有斐閣刊)のなかで以下のように述べている。

ブルーム卿は,1821年,刑事弁護の真髄を説いて言った。「弁護人はその依頼者に対して負担する神聖な義務として,世界のうちでただ1人の人,つまり,依頼者のために,かつ依頼者のためにのみに,その職務を行わなければならないということであります。いかなる手段をつくしても依頼者を助けること,弁護人を含む依頼者以外のものに対するいかなる人にどのような迷惑をおよぼしても、依頼者を保護することは、弁護人の最高にして疑いを容れる余地のない義務であります。弁護人は依頼者以外のものに対し,驚き,苦しみ,災厄,破壊をもたらそうとも介意すべきではありません。否,弁護人が愛国者として負担する国家に対する義務をも必要あれば風に吹きとばし,依頼者保護のため国家を混乱に陥れることも,それがもし不幸にして彼の運命だとしたら,結果を顧みることなしに,続けなければならないのであります。」

「罪を憎んで人を憎まず」に似て非なる「人権を擁護しても被告人を弁護せず」が,弁護人の役割であると考えている弁護士も少なくない。しかし,それは,肝心の被告人を忘れたもので,弁護の名に値しないと言うほかはない。被告人のためにのみ,献身的に最善を尽くすこと,すなわち積極的な誠実義務の遂行こそが,弁護人の任務である。

驚き、苦しみ、災厄、破壊をもたらす。国家を混乱に陥れる──。

ブルームの言葉は、依頼人を保護するためなら、弁護士は反社会的行為や犯罪的行為をもいとうべきではない、と言っているようなものだ。この英国貴族が200年も昔に説いた極論を「刑事弁護の真髄」と讃え、「積極的誠実義務の遂行こそが弁護人の任務」と言い切る説があるのだから、いかに「弁護士倫理」が解釈次第で危ういものになるかがわかる。「誠実義務」を建前にすれば、「弁護士は何をやっても許される」という特権の濫用につながりかねない。

刑事弁護人としての職務にからんだ行為で、山本弁護士は罪に問われた。

そもそも組織的な犯罪では、下位者が警察に逮捕された場合、上位者を庇うために黙秘することは常識的に知られていることだ。また、「秘密交通権」(弁護士とは立会人なく接見することができる)を悪用して、暴力団のお抱え弁護士が外部との連絡役となり、証拠隠滅や口止めを幇助することも少なからずある。暴力団や犯罪グループなどの弁護人となり、「刑事弁護の真髄」を極めれば、社会正義に反する結果をまねくことは目に見えているのだ。

『刑事弁護の技術と倫理』著者の佐藤弁護士は、サンラ・ワールド社の法律顧問や代理人を6年半にわたって務めつづけ、億単位の報酬を得てきた人物。佐藤弁護士がサンラ・ワールド社の顧問となった以降に、同社が集めた資金は数十億円にのぼる。その出資者は、驚き、苦しみ、災厄に見舞われた。

Satan20ii201 民事では「弁護士は、悪魔の代理人になってはならない」と自著に記している佐藤弁護士は、「弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない(弁護士職務基本規定321条)」ことを熟知しながらサンラ・ワールド社の代理人をつづけている。民事で「刑事弁護の真髄」を極めることは、反則ではないのか。

「アリウス3Dは08年1月に取引が開始される。コーヒー組合は08年春に配当が支払われる。それでも9割でも売ったほうが得だと言った津田哲也に、投資家は損した1割を損害賠償請求しなければならない」

これは、佐藤弁護士が'06年末にサンラ・ワールド社の出資者に向けて、しきりに発していたプロパガンダだ。その発言の一部が録音されているので、下のリンクをクリックして、異様に熱のこもった佐藤弁護士の弁舌を聴いてもらいたい。

http://news-tag.cocolog-nifty.com/blog/files/sato.07.12.27.wma

発言の過激さは、ブルームに負けず劣らずだ。しかし、それから1年5ヶ月経ったいま、佐藤弁護士のプロパガンダが出資者を欺くデマ宣伝であったことは、すでに証明されている。佐藤弁護士の言に惑わされなかった出資者は、資金の「9割」を取り戻して救われた。

このプロパガンダが展開されてから間もなく、 増田俊男氏とサンラ・ワールド社は和解金の不払いを続発させ、裁判上の和解までホゴにしている。プロパガンダを信じた出資者は厄災に苦しみ、サンラ・ワールド社は裁判所の強制執行を受け、増田氏は江尻真理子氏とともに日本を離れた。そして、佐藤弁護士だけが億単位の報酬を手に入れたのである。

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