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2009/05/04

「暴力団員との交際で倫理観が鈍麻していた」と弁護士に実刑判決

証拠隠滅と証人等威迫、脅迫の罪に問われていた東京弁護士会所属の山本至弁護士に対し、宮崎地裁(高原正良裁判長)は先月28日、懲役1年6月(求刑懲役3年)の実刑判決を言い渡している。

山本弁護士は、暴力団に関係した詐欺グループの弁護活動にからんだ2つの事件について起訴されていた。

その事件は、盗品等有償譲り受け罪(振り込め詐欺に使用する通帳の売買)で起訴された元暴力団組員(有罪判決・上告)の弁護人を務めていた'06年2月、指定暴力団『松葉会』系組長らと共謀。東京都内の喫茶店に呼び出した男性2人に「おまえらがやったという文面を書け」と言って虚偽の書面を作成させ、同年9月に証拠として宮崎地裁に提出したとされる「証拠隠滅事件」。

そして、もう1つは'06年11月、振り込め詐欺グループ上位者の暴力団関係者に警察の捜査をおよばなくさせるために、東京地裁で詐欺の罪で公判中だった被告の男に、警視庁麹町署の接見室で黙秘を強制した「口止め事件」だ。「完全黙秘はきついです。正直に話したい」と言った男に対し、山本弁護士は「ふざけるな。黙秘しろ。おまえのオンナもこっちで面倒を見てる。おまえの実家も知っているんだ。余計なことをしゃべったら、オンナや家族がどうなっても知らんぞ」と、接見室の仕切り板をたたいて脅迫したとされた。

山本弁護士は全面無罪を主張していたが、宮崎地裁の判決は「暴力団員との交際を通じて、弁護士としての規範意識や倫理観が鈍麻していた」と指摘。証拠隠滅行為を「虚偽の証拠を出すことで、冤罪を作り出そうとしたもので、刑事司法の根幹を揺るがしかねず、反社会性は大変強い」とし、脅迫行為についても「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する弁護士の職責を逸脱した」として、検察側の主張をほぼ認めた。

山本弁護士の裁判をめぐっては、300人を超える弁護士が大弁護団を結成している。また、山本弁護士が証拠隠滅事件で保釈中に、口止め事件で2度目の逮捕をされた2日後の'07年10月11日には、東京弁護士会の下河邉和彦会長がつぎのような声明を出していた。

山本至会員に対する第1回公判にあたっての会長談話

本日、当会会員である山本至弁護士に対する証拠隠滅被告事件の第1回公判期日が、宮崎地方裁判所で開かれた。この事件は、山本至弁護士が、無罪を主張する被告人の弁護人として行った証拠収集及び法廷での証拠提出という弁護活動が、犯罪として問われた事件である。山本弁護士は、本日の第1回公判を目前にした一昨日、宮崎地方検察庁の検察官により再び逮捕されたが、これも、弁護活動として被疑者に接見した際の山本弁護士の言動が「脅迫」であると疑われたものである。

もとより証拠を偽造し、これを真正な証拠であるように装って裁判所に提出するといった行為は正当な弁護活動ではなく、接見の際に被疑者を脅すなどの行為が許されないことも同様である。

しかし、捜査権・公訴権を持つ警察・検察と被疑者・被告人の権利・利益を擁護する弁護人とは、基本的に対立構造にあり、殊に無罪が争われる事件においては、その主張が鋭く対立する関係にある。このような対立関係にある弁護活動の正当性如何を判断することはそもそも容易なことではない。捜査権・公訴権を有する警察・検察が、その権力を一方的に行使してそれを判断するといったことは、弁護活動を萎縮させること甚だしいものがあり、事案の真相を明らかにするという観点からも、許されないことと言わねばならない。

本日第1回公判を迎えた証拠隠滅被告事件についての山本弁護士の逮捕は、無罪を争う裁判の第一審の判断もいまだ下されていない段階で行われたものである。正に検察と弁護が鋭く対立している最中に行われたものであって、到底許されないところである。日弁連は、既に昭和43年の第11回人権擁護大会において、無罪主張の事件における証人を公判中に偽証により逮捕するべきではない旨を決議して、法務大臣及び検事総長宛にこの旨を強く要望しているところであって、今回の事態は、誠に遺憾である。

しかも、一昨日の山本弁護士の「脅迫」容疑での逮捕は、弁護人として接見した際の言動が「脅迫」であったとされていることからすると、捜査機関によって、接見内容の取調べがなされたことを疑わざるを得ない。仮にそうであるとするならば、憲法上の保障に由来する被疑者・被告人と弁護人との間の秘密接見交通権(刑訴法39条1項)が、捜査機関によって侵されたものと言わざるを得ない。日弁連は、古く昭和39年の第7回人権擁護大会において、秘密接見交通権の実効性を求める決議を採択しているところであり、今回の事態は、憂慮に堪えないものがある。

本日第1回公判を迎えた山本至会員については、その弁護団を支援する会に400名を超える全国の弁護士が参加しているとのことであり、一昨日の逮捕を受けて、さらに支援の輪が広がりつつある。当会としては、今後の審理の行方を重大な関心を持って注目するとともに、正当な弁護活動の確保と被疑者被告人の権利・利益の擁護に向けて、全力を挙げて取り組むものである。

2007(平成19)年10月11日
東京弁護士会
会長 下河邉 和彦

判決後、山本弁護士側は即日控訴しており、シロかクロかの司法判断は上級審にゆだねられている。山本弁護士の大弁護団や支援者会などが主張するように、「弁護活動の妨害」という検察の弾圧的な意図があったのかもしれない。しかし一方で、証拠隠滅や証人威迫の行為によって、警察の捜査が弁護士によって妨害されていた事実が存在していた可能性も否定はできない。もしも捜査が妨害されていたのだとすれば、詐欺グループの主犯格は逮捕を逃れ、被害を拡大させることにもなりかねなかった。また、その稼ぎが、暴力団の資金源になっていたかもしれないのだ。

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