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2011/05/15

ボトックス(ボツリヌス菌毒素製剤)治療の「医療過誤訴訟」控訴審に来月9日判決 〔名古屋高裁〕

医療法人社団黎明会『高橋眼科医院』(岐阜市早田栄町)で受けた〈ボトックス〉治療のミスによって後遺症が生じたとして、岐阜県在住のA子さんが同医院らに200万円(岐阜地裁の1審では1400万円)の損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審判決が、来月に名古屋高裁で言い渡される予定だ。

〈ボトックス〉とは、米国の「アラガン社」が国際商標権を持つ医薬品で、ボツリヌス菌が産生する毒素であるボツリヌストキシンから、A型といわれる血清型毒素だけを抽出精製した製剤。A型ボツリヌス菌毒素は、神経伝達物質であるアセチルコリンという物質の放出を抑制して、筋肉を弛緩させる。その作用を、局所性ジストニア(身体の一部が不随意に痙攣する神経疾患)などの治療薬として応用したものだ。

現在〈ボトックス〉は、世界80ヵ国以上で承認されている。日本においては、'97年に厚生労働省が眼瞼痙攣(がんけんけいれん)の注射薬として認可したのが最初だ。以降、片側顔面痙攣や痙性斜頸(けいせいしゃけい)、過活動膀胱、多汗症などの治療に使用されるようになった。

この〈ボトックス〉が、一般にその名を知られるようになったのは、近年に美容整形外科の分野で使われるようになってからのことだろう。メスを使わずに、顔の表情筋に注射するだけで、シワ取りや小顔効果が得られる「プチ整形」として〈ボトックス〉施術の人気は高い。そのためか、手軽で安全な治療というイメージでとらえられがちで、副作用のリスクはあまり認識されていないようだ。〈ボトックス〉注射がもたらす可能性のある副作用は、軽いものでは頭痛や吐き気、兎眼(マブタを完全に閉じることができない症状)、涙目、ドライアイなどだが、重大なものでは嚥下(えんげ)障害や感染症を起こして死亡した有害事例もある。だからこそ〈ボトックス〉を使用する医師は、感染症法に基づく特別な「教育訓練」を受け、製薬メーカーが添付した説明書に記された用法・用量を厳守して治療にあたることが義務づけられているのだ。

ところが、A子さんが高橋眼科医院で受けた治療は、きわめてズサンなものだったという。

高橋眼科医院で受診する以前の'05年から'06年にかけて、A子さんは宮城県仙台市内の脳神経外科病院と東京都内の清澤眼科医院で「メージュ症候群」と診断され、計10回を超える〈ボトックス〉注射の治療を受けていた。メージュ症候群とは、眼瞼痙攣とアゴや頸部の不随意運動の合併がみられる疾患だ。完治はしにくいため、痙攣を抑えるには治療を継続しなければならない。〈ボトックス〉注射の効果がつづく期間には個人差はあるが、一般に3~5ヵ月程度だからだ。しかし、A子さんは岐阜市内へ引っ越したことで、東京の眼科医院へは通院できなくなった。そこで新居の近くで〈ボトックス〉注射のできる医院を探し、たまたま見つけたのが高橋眼科医院だった。

高橋眼科医院で、A子さんが受けた〈ボトックス〉注射は'08年6月の13日と27日、そして同年10月3日に計3回。治療にあたったのは、いずれも副医院長の医師だった。この3回の〈ボトックス〉注射のうち、初回と3回目の治療で注射器から漏れた薬液が眼に入ったが、医院側が洗浄するなどの適切な処置をとらなかったことから、角膜炎や視力低下(矯正視力で左右とも1.0から、右0.6、左0.5に)などの後遺症が生じた、というのがA子さんの主張だ。

前述したように、〈ボトックス〉注射には副作用のリスクはある。しかし、その発現率は、そう高くはない。製薬メーカー添付の説明書によれば、兎眼や閉瞼不全などで0.5~2%未満。さらにA子さんが発現したという角膜びらん、角膜炎、結膜炎、眼痛、視力低下などでは、わずか0.5%未満でしかない。しかも、それらの副作用は、適切な処置を行っていれば数週間で治癒するものとされている。ところがA子さんにあらわれた症状は、かなり重かったようだ。

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上の2枚の画像はA子さんの顔写真だが、左のものは、2度目の“トラブル”から3ヵ月近く経った'08年12月25日に撮影されたもの。そして、右の画像は'09年1月29日の撮影だ。2枚を見くらべてみると、左のものは頬骨のあたりがコブのように大きく腫れていることがわかる。この腫れが〈ボトックス〉の影響によるものなら、治療の副作用の域を超えている。注射液が眼に入ったことと、その後の処置が不適切だったことによって、ボツリヌス菌毒素が遠隔筋に害をおよぼした疑いを抱かざるを得ない。

また、仙台と東京で10回を超えて受けた〈ボトックス〉注射で、Aさんには一度も副作用がみられなかっことも、高橋眼科医院の治療に問題があったことを示唆しているのではないだろうか。

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コメント

訴訟になるということは、医院が責任逃れをしているのだと思いますが、このような事故に遭っても、患者は泣き寝入りしなければならないとしたら、怖いことだと思います。
医療訴訟では、患者は証拠提出が難しく、不利な状況に置かれ、不当な判決をされることが多いみたいすが、裁判でも認められないとしたら、被害者は何を頼ればよいのでしょうか。

投稿: 河合美咲 | 2011/05/17 08:52

そのボトックスは中国からの安い偽者かも

投稿: 無名 | 2011/05/24 21:31

中国製の偽物だったとしても、相手方の過失割合が高くなるだけだと...。

投稿: 無名(2) | 2011/05/26 20:12

日本国内で、医師が薬剤購入可能な正規ルートは、認可製薬会社(グラクソスミスクライン)だけで、不正規ルートからの薬剤で保険診療した場合、保険の不正請求にあたるそうです。
また中国などから入手した薬剤は、粗悪なものが多く、事故になるケースも多いようですが、この記事の事故は、医師が薬剤を目に入れ、その後も処置をしないために顔面が腫れたようなので、薬剤の副作用のせいにはできないのでは?

投稿: 小林 | 2011/05/27 06:47

仰るとおりだと思います。 逆にボトックスが目から混入したため、ボトックスの本来のベネフィットであるアセチルコリンの抑制が過剰および広範囲に渡って(薬理)効果を発生したため、顔の神経に一部麻痺が起こり(すなわち、筋弛緩のため)目から下の筋肉が抑制されたため、腫れた状態になった。それと、ボトックス本来のポツリヌス菌の毒性(本来、それがべネフィットとなるものだけど)により、炎症等を起こしたのだと予想されます。

ですので、中国製の粗悪品と言うより、本来の正規ルートで入手された高品質(?)な本来であれば薬理効果が十分に期待できるものであったのに、その取り扱いを熟知していなかったので目に混入したものと予想するのが正解だと思われます。

投稿: 無名(2) | 2011/05/28 18:33

ツイッターに書いてありましたが、名古屋高等裁判所の岡光裁判長は、医院に対して5回和解勧告を出し、支払い和解案を提示して何回も説得したけど、医院は拒否したそうですね。

投稿: 匿名 | 2011/06/01 19:36

過去の「知恵袋」での質問を読み返すと、どう考えてもすでに高裁で棄却判決が下されているはずです。
第2回口頭弁論で結審したら、何回異議申立てしようが、裁判所に応じる義務はなく、判決を下すはずです。
A子さんは、私宛のメールで、原告側の証拠提出の提出を待つため「7月まで判決言い渡しを延期」したと言っているけれど、裁判所がそのように一方的に原告の肩をもつようなことはしません。
それに、製薬会社や厚生労働省の見解を「証拠」として提出したところで、たんなる一般論で、原告の主張を裏づける根拠とはなりません。そんな無意味な書面のために裁判所が裁判を遅延させることはありえません。
被告は当初から和解を拒否し、迅速な判決を求めているわけなのだから、裁判長が5回も和解勧告するはずはありません。
ぜひとも真実を知りたいものですね。

投稿: 須坂 | 2011/06/07 05:00

須坂三十四さん、コメントありがとうございます。

A子さんの裁判の控訴審で、判決言い渡しの期日が延期されたことは事実です。別件の取材が立てこんでいたため、期日延期の報告が遅れていましたが、前日までには記事中で訂正するつもりです。

変更後の期日は7月5日です。

延期された理由が、製薬会社と厚生労働省からの回答待ちであることは事実です。厚労省のほうは、まだ回答がないようですが、製薬会社からは5月17日付の回答書が届いています。その書面は、私も内容を確認しています。

なお、本件控訴審において、5回の和解勧告があったことも事実です。

「知恵袋」など、ネット上のカキコミは、いっさい参考にしません。

http://my.chiebukuro.yahoo.co.jp/my/suzaka1034

投稿: 津田哲也 | 2011/06/07 10:00

津田さんの確認されたことが事実であるなら、その事実経過をA子さん自身のブログで報告できるはずです。
製薬会社の回答書の写真や控訴趣意書の内容も公開できるはずではないでしょうか。
わけのわからない内容のブログを見たチエリアンから総攻撃をくらって、結局ブログを削除して撤退してしまったのはなぜでしょうか?
控訴審で判決を覆すには新証拠が必要なはずですが、それが製薬会社と厚生労働省の回答書ですか?
自分で自分の裁判の経過について客観的な説明ができない人間が、1審で惨敗した本人訴訟を逆転勝訴させるなんて芸当が可能なんですかね。
「和解期日」で検索すると、A子さんの過去の「知恵袋」での質問が大量にヒットします。あの呑み込みの悪い質問をし連発し、思い通りの回答が得られないと、回答者を罵倒していた原告が逆転勝訴ですか?
本当ならば、裁判の常識が覆りますね。
ただただ驚きです。

投稿: 須坂 | 2011/06/07 13:39

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