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2011/06/08

ボトックス「医療過誤訴訟」を検証する① 製剤の副作用か医療ミスによる後遺症か「製薬メーカー回答書」を控訴審で証拠提出

メージュ症候群(眼瞼痙攣)の治療で受けたA型ボツリヌス菌毒素製剤<ボトックス>注射のミスによって後遺症が生じたとして、岐阜県在住のA子さんが医療法人社団黎明会『高橋眼科医院』(岐阜市早田栄町)に200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、あす9日に予定されていた判決言い渡しの期日が来月の5日に変更されている。

【関連記事】ボトックス(ボツリヌス菌毒素製剤)治療の「医療過誤訴訟」控訴審に来月9日判決 〔名古屋高裁〕 2011/05/15

延期の理由は、A子さんが4月1日付で「厚生労働省」と製薬メーカーの「グラクソ・スミスクライン社」に送った<ボトックス>の添付文書と副作用との関連性についての質問状に対する回答が、前回の期日(5月16日)の時点で返っていなかったからだ。本件控訴審が争われている名古屋高裁の岡光民雄裁判長は、この二者からの回答書面の証拠提出を待って、A子さん側からの弁論再開の申し立てを認めるかどうかについて判断することを示唆したうえで、判決言い渡しの期日を暫定的に先送りしていた。

A子さん側は控訴審になってから、おもなものだけでも10点あまりの新証拠を提出してきた。そのなかでも、厚生労働省とグラクソ・スミスクライン社からの回答書は、「医療過誤」の有無を裁判所が判断するうえで重要な証拠のひとつとなりそうだ。

岐阜地裁で開かれた1審で、A子さん側は'10年7月に敗訴している。その判決のなかで同地裁の内田計一裁判官は、高橋眼科医院で受けた<ボトックス>治療の影響でA子さんが点状表層角膜炎(び慢性表層角膜炎)を発症した事実を認定しながら、医院側の主張を採用して<通常,数週間で治まることが認められ,これらの兎眼及び点状表層角膜炎が三宅(筆者註:治療にあたった同医院副院長)の過失によるものとは認められない>としてA子さんの請求を棄却した。この判決を不服としてA子さん側が控訴した2審は、疾患の原因が<副作用>であったのか否かという点が最大の争点だ。そのため<副作用>の定義を明確にし、医療ミスが存在したことを証明する目的で、A子さんは厚生労働省と製薬メーカーに回答を求めていた。

厚生労働省からの回答は現時点でまだないが、グラクソ・スミスクライン社の回答書は、きょう付で名古屋高裁に提出された。この書面には、<本剤が適正に使用されたときに起こり得る、本剤によるものと企業が認める事象を副作用として添付文書に記載している>とある。

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そして、<ボトックス>の添付文書の「使用上の注意」には、<基本的な注意事項>として強調された一節に「眼輪筋へ投与する場合」の注意点について、つぎのように書かれている。

眼科的観察を併せて実施し、特に眼球を傷害しないように眼球の保護に十分注意すること。また、経過観察を十分に行い、眼科的異常があらわれた場合には、直ちに精密検査を受けさせること。

そして別項には、<本剤が眼に入った場合は、水で洗い流す>という、具体的な対処法も記されているのだ。

本件裁判の訴因は、高橋眼科医院副院長の医師が眼輪筋に<ボトックス>を注射した際、漏れた薬液が眼に入ったが、洗浄するなどの処置をとらなかった。そのためAさんは角膜炎を発症し、その症状を同医院は精査鑑別せず、感染予防薬の処方などもしなかったことから視力低下(矯正視力で左右とも1.0から、右0.6、左0.5に)などの後遺症が生じた。というものだが、1審の岐阜地裁判決は、<原告が,三宅に薬が目に入ったと告げたが,直ちに洗浄するなどの処置を取らなかったことを認めるに足りる証拠はない>として、A子さん側の主張を退けている。

しかし、前述したように同判決で内田裁判官は、A子さんの眼に<ボトックス>注射の影響で生じた疾患を<副作用>であることを前提として、「数週間で治まることが認められ」としている。ところがA子さんの症状は重く、数週間で治癒することはなかった。

Shindan001Shindan002_25月15日の記事でも触れたが、A子さんが高橋眼科医院で<ボトックス>注射を受けた3回の治療のうち、薬液が眼に入る“事故”があったと主張するのは'08年6月13日と同年10月3日の2回。その翌年の'09年2月から、A子さんは岐阜市内の別の病院で角膜炎の治療をつづけているが、2年近く経った昨年9月になっても完治していない(画像参照)。

仮に、治療直後の角膜炎の発症が<副作用>であったとしても、その後の適切な処置を怠ったことによって<後遺症>となった可能性があることは否めないのではないだろうか。そうだとすれば、<ボトックス>添付文書の注意書きに違反しており、グラクソ・スミスクライン社の定義する<副作用>にはあたらないことになる。

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控訴審では、今年4月19日に開かれた<第3回口頭弁論>の同日にもうけられた和解期日において、岡光裁判長は医院側がA子さんに30万円を支払う旨の和解案を提示している。しかし、当初に予定されていた判決言い渡し期日が迫っても、和解が成立することはなかった。

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コメント

第一審判決の理由に対する意見ですが、そもそもそんなに直ぐに副作用として、角膜炎が発症し、その因果関係を否定できない薬品であれば、国家(厚生労働省)が医薬品として承認した経緯に遡及して考慮しなければいけなくなる。

ですが、ボトックスはもともとがポツリヌス菌であり毒です。しかし、その毒によってアセチルコリンの抑制(抗コリン)を故意に発生させ痙攣を止めるのです。ですので、抗コリンの一番理解し易い症例として、抗コリン薬が本来の(作用を薬理効果として)薬品が活躍する症状として有名なのは、尿路結石症、膀胱炎です。つまり、神経伝達物質のアセチルコリンを抑制して胃腸の過剰な活動を抑えたりするものです。

ですが、通常 経口薬として用いられるので最少量から処方して、その薬理効果と副作用(のどの渇き・メマイが有名)を経過観察しながら増減量したりするのが一般的です。

でも、注射薬で目に混入した場合、そのアセチルコリンの抑制(抗コリン)そのものが目の視神経(それによる目の動き=筋肉だから)が遮断される結果となり、その結果として当初 角膜炎が発症して、その毒(本来は薬理効果)によって目の神経が抑制されて、視力の低下が予想されるのではないでしょうか?

素人ですけど....。

投稿: 無名(2) | 2011/06/08 22:04

【追伸】そもそも、経口薬以下あるいは同等程度の副作用の予見による国家(厚生労働省)の承認薬であれば、眼科医などによるボトックスの眼瞼痙攣への施術に対し、講習(技術習得)を義務化させる必要性はどこにあるのか根拠が不明になります。

投稿: 無名(2) | 2011/06/08 22:17

医療訴訟経験者です。
最高裁判例で『添付文書に従わないで、事故が起きた場合は過失と推定される』と判示されているため、内田計一裁判官の1審判決は、最高裁判例違反になります。

よって、眼科医院勝訴の1審判決を名古屋高裁が支持することは難しいのでは?

投稿: 医療訴訟経験者 | 2011/06/09 01:05

記事中に記載の、清澤眼科医院のブログにアクセスすると、医療事故(エラー)の対応についての記事がありました。

薬剤の添付文書注意事項や、手術などの説明同意文書の重要性、手術の名称、手術の必要性、その処置をしないとどうなるのか、その方法に伴う危険性、医師の署名と日時、患者の署名と日時の記載が重要であるとのことです。

投稿: 高橋 | 2011/06/09 10:20

仰るとおりだと思います。本人の意識レベルがクリアであれば、手術(施術)に合意した証明として、署名が求められるます。通常、患者本人の意識レベルがクリアな状態であって、手術(施術)の同意が無ければ傷害罪の対象となります。

また、患者さんの意識レベルが悪い場合で、生死の危機が切迫しいる時は、その扶養義務者の同意が得られれば扶養義務者に対して、署名を求めます。

その他、事故などにより切迫した状況であれば、医師の判断によって可能ですが、眼瞼痙攣を緊急で治療しなければ生死に係わる状況とは思えないです。それに仮にポドックスでなくて切開を伴う手術(施術)であった場合、麻酔による死亡の可能性が(低いけど0%ではない。)ある以上、その麻酔科あるいはその手術を担当する医師あるいは医師名を記載した書面に対して、看護師より署名を求められるのが一般的です。

そうしなければ、現在 医療訴訟が多いと言われている女性専門科(産婦人科)などは、訴訟沙汰が倍増するのではないでしょうか。だからこそ、事前のインフォームドコンセントを実施し、患者さんあるいはご家族の承認(署名)を得ているのが現状だと思います。

投稿: 無名(2) | 2011/06/09 23:21

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